4月9日 陰キャ的前進 読書感想文「改良」

ついに明日から完全に外出の仕事がなくなっちまいます。在宅ワークです。刀が恋しいよ。愛刀の詩雨景虎も疲労骨折で修理中です。寂しい。

家に居る間は、小説を読むか詩を読むか短歌を読むか俳句を読むかくらいなので、私が産み出せるのは生き死にや生活への思いと読書感想文くらいです。

だから今日は最近ぶっ刺さった本の感想を書きます。私のことだからちゃんと感想になるかわからないけど書きます。

遠野遥 改良

女になりたいのではない、「私」でありたい
ゆるやかな絶望を生きる男が唯一求めたのは美しくなることだった


これは帯にあった文です。
あらすじは省きますが、ざっくりいうと、女性的な美しさを追求する男性が主人公で、その男性がバイトいったり女の家に泊まったり家にデリヘル呼んだり暴漢に襲われたりします(雑すぎてすみません。)
二時間くらいで読めるのではと思うので、是非本編を読んでください。

読了したのは一ヶ月以上前だったと思います。だけど読んでる最中からも読み終わってからも、ずっとなにかが奥歯に挟まっているような感じです。
あ、私、知ってますよ、その怒り。でもわからん。沸々と腹の底は煮えたぎっていましたが、冷淡な語り口からか頭の方は気持ち悪いくらい冷静でした。
共感っていうのも違うんだと思う。私は女で主人公は男性、主人公は男性だったから最後には反撃できた。女だったら組み敷かれて終わる。意志は筋力に簡単に負けます。性別が逆だと一生共感なんてないんじゃないだろうか。似たところを探してみるけど、それは興味でしかなくて、憧れなんじゃないか。
この主人公の感性は私の持っているものにあまりに酷似していて、より一層異性の存在を遠くに感じました。
知ってるようで未知との遭遇だった、そしてその気持ち悪さを解消する術がないまま、淡々と進むリアルすぎる時間の流れや思考に引きずられて、未だに私の奥歯には異物が挟まっている。

だから、なんだろう。ジェンダー問題はあんまり関係ないのかなって思いました。なんか、そこじゃない気がする。それを考えると一生悶々してしまう。私は既に悶々しているが。悶々疲れしてしまうから別のこと考えよう。

ラストシーンですが、悲惨と言えば悲惨な終わり方だけど、なんとなく光のある終わり方なのでは。
タイトルの「改良」にもポジティブさを感じます。「改造」でも「改修」でもないのは「私」が「私」として前進しているっていう前向きさを感じます。無機質だけどそこが面白い。

今の自分を否定する事でしか前に進めなくても、それで自己肯定が得意な陽キャに劣ると思わなくてもいいんやで。私たちもしっかり前に進んでるんやでって陰キャを励ましてくれる作品なのではないかと陰キャな私は思ったのですがどうでしょうか。

私は「今のままじゃだめだ」って叫び続ける苦しみはわかる気がしている。共感します。
この本を読んで、少しだけ自分の前進に気付いたよ。

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