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懺悔

地面などすべて、アスファルトで塗り固められてしまえばいい。

土も石も、アスファルトですべてたいらになれば、私たちの車いすのタイヤももっと軽やかに動かせる。行きたいところに、行きたい時に行ける。見えなかったものも見える。

山も木を切り倒し、全面スロープにして、リフトもつけば、私たちにも頂上からの展望が楽しめる。夢である富士山の御来光だっておがめる。

海の砂浜も、アスファルトで埋めてしまえば、波打ち際まで行ける。海に手をひたして、塩辛さも味わえる。見たことのない貝殻も、手に入るかもしれない。


そのかわり。
固いアスファルトを突き破り芽を出した、名もなき草花を見つけたら。

私はあなたに毎日水をあげよう。根元とアスファルトのすきまに肥料をあたえよう。強風が吹いたら、重石を乗せたバケツをかぶせて守ろう。

花が落ち、葉も枯れ、茎が静かに倒れるまで、寄り添わせてほしい。

それが私のエゴで、あなたに苦しい生を強いてしまった、せめてもの懺悔だ。

いただいたサポートは今後の創作、生活の糧として、大事に大切に使わせていただきます。よろしくお願いできれば、本当に幸いです。