ねがいごと
今年の夏は暑く、体調管理にかなり苦労した。
お盆休み中一度、ひどい下痢にみまわれた。
下半身まひの障がいを負っているので、排泄の感覚がわからない。ただ腹をさわるとほんの少しうごめくような兆候がある。それをたよりに、何度もトイレに行った。
だが最後、間に合わなかった。便が漏れ、私のからだだけでなく、服や便器までも汚してしまった。
ひとりではとても手がまわらなかった。やむを得ずパートナーに手伝ってもらった。暑さと臭いのなか、ふたりで私のからだや便器を拭いた。最後には私の手だけでなく、パートナーの手までひどく汚してしまった。
共に生きると言ってくれて、十何年。
迷惑と苦労ばかり、かけてしまった。
彼女に一体、なにをしてやれただろうか。
これから、自分になにができるのだろうか。
彼女は、幸せなのだろうか。
おりにふれ、疑問がわきあがる日々でもあった。これからも答えが見つけられる自信は、正直ない。
でもひとつだけ、私がしなければならないことはわかっている。
彼女より少しでも長く生きること。
どんな病におかされても、できないことが増えていっても、醜い姿になっても、これだけは果たさねばならない。
なぜなら、彼女からねがいごとをされているから。
「わたしの葬式にきてくれたお客さんには、ぜったいエビフライと鳥のから揚げをふるまってよ」
エビフライと鳥のから揚げは、彼女の大好物だ。
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