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いのちの削ぎ落とし

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短編、掌編小説など。
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2019年8月の記事一覧

宝物

 女の子の両脚が動かなくなって、車いすに乗るようになったばかりの、ある秋の日。
 女の子はお母さんに車いすを押してもらい、病院の外にお散歩に出かけた。病院からお出かけするのは、脚が動かなくなってからはじめてのことだった。
 看護師長さんから「おさんぽ、いいねえ」と声をかけられた。女の子は照れ、赤い野球帽をかぶりなおした。野球帽はお兄ちゃんが今日の散歩のため「かしてあげて!」とお母さんにあずけたもの

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