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隕石が落ちた砂漠に集まった天才少年少女、の話ではない アステロイド・シティ【映画感想文】


あらすじ(ではない)

検索して出てきたあらすじがどれもピンとこなかったので、自前で書こうとしていたが一生ピンとこない。そういう映画だった。

1955年、隕石が落ちた砂漠にある小さなモーテルに集まった人々をテーマにした作中劇。作中劇内で人々が集められた理由は天才の子供たちの中から特に天才の子供に賞を与え、軍が奨学金を与えるためであり、その子供たちの親、子供たち、モーテル近くの住人達に、兵隊や科学者、それぞれの出会いと劇そのものが製作者達も含めて斜め上に物語を進めていく。

感想

いつも通り私の感想noteはネタバレを含むが、この作品はネタバレがどうとかの作品なんだろうかと思わなくもない。

意味がまったくわからない訳ではないし、個々のシーンの示唆に富んだ発言と突飛なようでまとめられた物語とキャラクター達はとても良かった。

面白いか面白くないかで言えば確実に面白かった。
画面がずっと良かった。画面に置いてある一つ一つの色、物、人、空気、どれもがアステロイドだった(?)

私のお気に入りのシーンは開幕の口上と、軍のお偉いさんの授与式の最初の挨拶シーンと、挑む少年の挑む理由の告白の3つだ。開幕の口上は単にリズムがめっちゃ良くてラップ聞いてる?ってなったのが良かったし、軍のお偉いさんも凄まじいテンポの良さで喋りながら動いたところで部下がマイクの調整するのがコミカルで良かった。映画内での「劇」であるから意図的に全体的に台詞的なのだが、監督・脚本の味が存分に出ていて、言葉選びにセンスが光っていた。
挑む少年というのは、天才の子供たちのうちの一人で、なにかと「挑もうか?」と聞いてきては無茶な挑戦をする。唐辛子を丸かじりしたり、屋根から飛び降りたり、押してはいけないボタンを押そうとする。それを終盤で父親が何故やるのか?と問うた時に(正確に覚えていないので間違っていたら申し訳ない)「挑んでいないと、みんなから忘れられてしまう。挑んでいる時だけが、自分が存在していると信じられる」というようなことを返すのだが、そこがすごく良かった。なんならそこだけもう一度観たくすらある。え……めっちゃこのシーン良い……となってビックリした。ちなみにこの発言のあとで少年はサボテンに半そで短パンで登ろうとして止められる。

映画を観に行った理由としては、予告を観てまったく展開が想像できなそうだと思ったことと、あまりにもビビットな色彩が特徴的で目に焼き付いたため少し怖いもの見たさで観に行った。たぶん予告を観るか、タイトルで検索して、なんやこれ(興味)となった人は合うので観に行ったら良いと思う。

その期待した心はあまりにも正確に撃ち抜いてくれたので、私にとっては良い体験であったのだが、これを面白い映画だったよと人に薦めることは出来ないかも知れない。なにかを求めてる人が求めてるものには出会えるだろうとは思うが、何も求めずにわかりやすく面白い作品ではないと感じた。

まともに(?)感想を書くとこういう感じになるのだが、この映画の感想が難しい点として、やたらと意味深なのだが、意味があったのかわからないシーンが多数存在することだ。

インディーゲームのイースターエッグのようというか、製作者の遊び心なのか、考察の余地なのか、解釈を膨らませる人々を嘲りたいのか、おそらく意図はある。意図というかなにかしらの元ネタのようなものがあるのだとは思う。ただ如何せん私自身に個々の事象を繋ぎ合わせるだけの知識がなかったので、観ている段階では、なにかあるのかもしれないなという感想にならざるを得なかった。その意味深なシーンをいくつか挙げるなら以下のようなものだ。

・1955年という年代設定
・核爆弾が遠くで爆発しているシーン(最初と最後で2回)
・核爆弾の後で追いかけられている車と銃をぶっぱなしながら追いかけている警察
・主人公の車の故障の原因
・製作者側の話のシーンにも登場する宇宙人
・劇内でカットされた妻役とのシーンのやり取り
・そもそも作中劇である理由
・製作者側の話の番組は一体なんなのか、あのおっさんは人間なのか

覚えているものをパッと上げるだけでも上記のようになる。どうやら考察感想記事もあるようなので、なるほどとなったら本noteにもリンクを追記しようと思う。

なんとなくはエイリアン自身が作った思想矯正映画のような見方もできるのかなと思ったり、そう考えるとそもそも物語を知らずとも「なんか惹かれて」映画を観に来た私はピッタリの人だったのかと思ったり、そういう構造的な面白さはありつつ、本当に洗脳映画だったとしたならば、この感想もどこまで自分自身の意志で書いているかわからないのだろうなと思って少し怖くなったりしていた。

まぁ洗脳というほどのことはなくて、そういう楽しみ方もできるよくらいのものだったとは当然思っている。読み解き方としては監督のことをほぼ知らない身として浅めな気はする。ただ要素として、そういうことが考えられる面白さがあった。

もちろん主人公(?)の戦場カメラマンのおっさん(天才の子供の親の一人)の家族模様や、天才の子供たちの天才が故に理解されなかったことがようやく仲間と出会えたというやり取り、他の天才の親である女優の子供への目線と役へ向き合うプロ意識との葛藤というか在り方の話や、亡くなった母親との精神的な別れ、天才以外の子供たちのユーモア、科学者のおばさんが子供にも同じ目線で夢の先を歩もうと提示するシーン等々「良い」シーンは各所にある。意外とどれかしらが色んな人に刺さると思う。

でもなんかそういうのを全部ひっくるめてちゃぶ台をひっくり返されたような感覚が残るというか、本当に不思議な鑑賞後感が残る映画だったのだ笑

オススメかはわからないが私は期待通りではあった。アステロイド・シティ、映画を観終わったあとで頭を捻りたい人は、是非観てみて欲しい。


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