ポーランド旅行記・12日目(ウクライナ2日目)
タイトルはポーランドですが、11日目~13日目まではウクライナ・リヴィウ探訪記です。
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ゆるゆると起きた。外は灰色。ベッドで寝られた喜びを噛み締める。
ブランチを取ることにした。ベッドの中で選んだ旧市街内のカフェ。入ってみてびっくり。まるで2018年。駅周辺はソ連感満載で、旧市街は古めかしいヨーロッパ、と思ったらこんな店があるから、不思議だ。「Insta Breakfast」といういかにもなメニューがあったが今はないらしい。普通の朝ごはんプレートを頼む。
普通。この普通さがこの街からは浮いている気がする。真ん中の蜂蜜がびっくりするくらいおいしかった。なんなんだこれは、と思いながらパンケーキがなくなった後もスプーンで食べ続けた。
丘に登ることにした。辺りを一望できるらしいが、一面の曇り。とは言え今後これよりよくなる保証もないので行ってしまうことにする。旧市街そばではあるが中ではない。丘に近づくにしたがって、街並みが旧ソ連地域で見覚えのある景色になっていく。だんだん勾配がきつくなり、丘そのものになると階段。金属の階段に雪がうっすら積もっていて、いかにも滑りそう。慎重に登っていく。
登るに従って空に青みが増してきた。まさか、と思ったら頂上に着いた頃には青空。街の方はまだけぶっていたが、ウクライナ国旗が誇らしそうにはためいていた。
先の見えない登りに比べたら下りは速い。このまま市庁舎の塔に登ってしまおうと思った。旧市街の広場の中心にある市庁舎の塔からは、街がよく見えるらしい。この瞬間を逃すわけにはいかない。飛ぶような早歩きで戻る。
と思ったら市庁舎前では政治デモをやっており、市庁舎の立ち入りは終日無しとのこと。残念だがどうしようもない。明日の天気に期待。
することもないのでお昼を食べる。せっかくなのでウクライナ料理屋へ。緑のボルシチににんにくのパン、それとウクライナのワインをグラスで頼んだ。
緑のボルシチはウクライナの名物だとどこかで聞いていたのだが、やってきてびっくりした。味噌汁だ。わかめが入っている。沈んでいるサワークリームはいかにも豆腐だ。もちろん味噌は入っていないが、なんだかめちゃくちゃ味噌汁だ。「ボルシチはこの地域の人にとって日本の味噌汁のようなものです」とは聞いたことがあったが。たとえ話に現実が追いついてしまった。
もちろん味は味噌汁ではなかった。赤いボルシチから肉とビーツを抜いたらこんな感じだろうか……?スープの旨みはあるが、重みはない。上品にまとまった雰囲気だが見た目のイメージが拭えない。
満腹感よりも楽しかったなあという思いの方が強かった。街をぶらつく。本屋にも寄ってみたが、良さげな本はなかった。ロシア語で精一杯なのにウクライナ語なんて……と妙に腰が引けてしまう。
カフェに寄る。トルココーヒーの器具のようなものを砂で熱する、不思議な淹れ方をする店だった。勢いで砂糖をお願いしてしまったが、ない方が良かった。ケーキは「リヴィウ」というこの街の名前そのままのケーキ。こういうのに弱い。めちゃくちゃおいしかった。
どこかに来て、そこで次の目的地を考えるという行き当たりばったりの旅をしている。少し歩いたところに「迷子のおもちゃ達の庭」という場所があることを知った。
ようやくたどり着いたそこは、アパートの中庭におもちゃが置いてある空間だった。雪が積もり、日が落ちて暗くなったことも手伝って静かな凄まじさが限界まで充満している。誰かがやったのか、自然発生したのか、よくわからない。この「迷子」たちはずっと「迷子」なんだろう、そのくらい迷子だった。
旧市街に戻った。大きなチョコレート屋でお土産を買う。1階ではお兄さんたちが全力でチョコレートを作っていて、2階が販売店。リヴィウはコーヒーとチョコレートが有名だそうだ。「有名だそうだ」というのもあてにならない表現だが、街中のカフェの数からするに謎の説得力がある。
一旦ホステルにチョコレートを置きに戻ると、部屋に別の客がいた。自分の寝ているベッドの下にいるようだ。暗がりの中お互い顔も見ずにロシア語で話す。若い女性らしい。
夕食は市庁舎そばにあるブルワリーレストランで取ることに決めていた。店内はアメリカにありそうな雰囲気。自分より年下っぽいウェイターが注文を取りに来てくれた。ビールと、大きめのシュニッツェル。
旅行記を書き進めていたら料理がきた。ビールを持ってくるのを忘れていたことをえらく詫びられたが、別に食べながら飲むのでそんなに困ってはいない。シュニッツェルは驚くくらいおいしかった。シュニッツェルにしては厚いが、そんなことが気にならなくなるほど柔らかい。ひとり上機嫌になっているとジャズバンドの生演奏が始まった。演奏スペースに気づいていなかったので背中で聴くことになったが、ものすごくいい感じだ。ビールの2杯目をもらう。
0.3リットルを2杯で0.6リットル。昨日1杯で0.5リットル飲んだのに比べてだいぶ酔った。レストランの外に出ると冷たい空気が気持ちいい。ホステルに戻り、だらだら夜更かしをして日付が変わった頃寝た。