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思い出に教えられたこと(♯ショートショートnote杯)

 もう駄目かな・・・
 真っ暗な部屋の中で死を連想した時、必ず暗闇の中から現れる奴が居る。

 強風の中、ふたり立っていたあの海岸の、あの荒れ狂う海の、灰色の景色とともに、そいつは俺の脳裏に端然と姿を見せる。

 そして告げる。

「負けんなよ」

 その言葉でこれまで何度か立ち上がって来られた。
 もう一度会う日まで負けちゃいけないよな、と。

 その彼とは半年しか一緒に居なかったが、その半年間、ほぼ毎日一緒に居た。

 苦しいだけの日々だったのに、今となってはあの十代最後の季節に帰りたいと思うこともある。

 もし時間を巻き戻せるなら、今度は卒業まで一緒に過ごしたい。

 友よ、本当はこんな陳腐な題名じゃ表し切れないんだ。

 友よ、生きていますか。

 次に会うのは、あの世なのかもな。

 もし会えたらまず言いたい。

「あん時は悪かった。一発殴ってくれ」

 そのあとで言い訳をさせてくれよ。

 出来ればそのあとで、俺たちだけの思い出話で笑い合えたら・・・。

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