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しゃべるピアノ(♯ショートショートnote杯)

 部活帰りのいつもの帰り道。
 友人たちと別れて、一人入る夕暮れの細道。

 たんたららん、たら、たらららららららら

 白亜の家の二階から、いつも拙いカノンが聞こえて来る。

 校庭でボールを追いかけて、泥だらけになったぼくに語りかけている気がする。

 たんたららん、たら、たらららららららら

 音はいつもここで途切れる。
 ぼくの足も止まる。

 見上げた窓に向かって、
「あぁ、惜しい」
 その先の旋律を期待するように心の中で呟いて、ぼくはまた歩き出す。

 たんたららん、たら、たらららららららら

 答えるようにピアノはまたぼくに語りかけて来る。
 明日もまた窮屈な中学の制服を着る。

 たんたららららら、らららららららら

「あっ」

 思わずにやけて、空を見上げた。
 ふと、綺麗な薄暮をカノンが演出していた。

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