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空飛ぶストレート(♯ショートショートnote杯)

玄関を出た文太を午後の日差しが出迎えた。
背伸びをしながら、その眩しさを受け入れた彼は、郵便受けに届いていた封筒を手に取った。

「また不採用か」

先日面接を受けた会社の印字を見つめながら、嘆息した。
バイト先で封を開けることにして、手にしたものを鞄に仕舞い込むと自転車に跨った。

厨房はいつも忙しい。気を紛らわすようにひたぶるにフライパンを振り続ける。踊る食材を見つめながら。
そろそろこのフリーター生活から抜け出したい。

業務を終えて店を出ると、自転車で夜深の街を走り出す。
橋上に差し掛かると、川面に反射した街並みが滲んでいる。
ふと、自転車を止めた文太はバイトの休憩時間に不採用通知で作ったものを取り出し、再び形を整えた。
紙飛行機は勢いよく文太の手を離れた。

夢よ、希望よ。夜空を切り裂いて、どこまでも飛んで行け。
ただただ真っ直ぐに進んで行け。

追い風に吹かれて進んで行く紙飛行機の行く末を、文太は夜風に耐えながらじっと見つめていた。

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