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「この人、変!」と,大御所に言われた日

 作家の大御所、宇野千代に取材したことがある。

 25歳のマスコミ駆け出しの頃のことである。彼女は、大正、昭和、平成と小説や随筆で活躍した作家である。その宇野千代先生に私は、こう言われた。
「この人、変」
 と。確かに今、思い返しても、そう言われて仕方のないインタビューをしたからだ。
 まず、下調べはおろか彼女の作品も、一作として読んでいなかった。当然、質問の内容も完全に的外れだったに違いない。思い返すたびに、当時のことがリアルに甦り、電車の中で1人で赤面してしまうハメになる。
 似た様な経験で、加山雄三のインタビューも、失敗した。
「ちゃんと勉強してこなくちゃ、ダメだよ」
 と、優しく諭されたのも、駆け出しのころだった。
 松井秀樹は、彼が高校3年の時に取材した。その時、彼の実家へ行ってお父さんにインタビューしたのだが、お父さんはわざわざ寿司を取ってくれて二人でビールを開けて……。あとは、詳しく覚えていない。
 失敗談は、まだまだあるが。
 どんどん思い出されて来て、落ち込んでいく……。

 駆け出しだから、失敗は許された。でも失敗しなきゃ、気合いの入った心構えも生まれなかっただろう。そんな下積みがあったから「仕事の90%は、事前の準備だ」と言える。もう、言い訳だな、これ。

創作活動が円滑になるように、取材費をサポートしていただければ、幸いです。