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小生意気な若造、付いて行くぞ。覚悟しろ!

 利休忌の後、初めてのお茶のお稽古でした。
 お点前は「旅箪笥」のお稽古。
 ご教授していただいたのは三十歳前後と思われる、小生意気だけどイケメンのアシスタント講師の方でした。私のお点前は贔屓目に見ても「流れるような」とは行きませんでした。薄茶の平点前の順序すらおぼつかないと思えるような、ぎこちなさ。
 お点前が終わって講師の彼に、
「旅箪笥のお稽古、ありがとうございました」
 とおそるおそるご挨拶。その後、講師の方の講評を頂くのですが、小生意気な若造のお話が、私の涙を誘いました。
「全体に、お点前の順序がうる覚えですね。でも、一つ一つの動作がゆっくりしっかりと出来てました。手順を間違えても、気にしないでください。手順は回を重ねることで身についてきますから、大丈夫です」
「ということは、お点前の順番はともかく、一つ一つのお点前の動作がちゃんとできているということですか。自信を持っていいんですね」
「そうです」
 イケメンだけど小生意気なアシスタント講師の同意に、不覚にも私は込み上げてくるものをこらえきれずに、一粒の涙をこぼしそうになりました。
 それくらいに「旅箪笥」のお点前は、手順がボロボロでボロクソに言われるんだろうなと思い、講評を覚悟して待っていました。それが意に反して、
「手順はダメですけど、一つ一つのお点前の動作はしっかりと出来ています。大丈夫ですよ」
 の言葉に、本当に救われた思いがしました。それまでの緊張が一気に氷解し、つい、涙をこぼしそうになったのですが、必死にこらえて。
「旅箪笥のお稽古、ありがとうございました」
 とご挨拶を終えることができました。ただの小生意気な奴から、こいつは若いけど出来る奴に、評価が一変してしまいました。
 小生意気な若造、付いて行くぞ。覚悟しておけ!
(※写真はイメージです。本文と関係ありません)

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