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激しく腹落ち!英語圏における「5S」

「5S」とは何か。「KY」を「危険予知」と答えてしまう工場なあなたにとっては常識だろう。「整理、整頓、清掃、清潔、躾(習慣)」である。少なくとも工場勤務者であれば必ず知っている超常識ワード。

ただ、それにしては「整理・整頓の違いって何よ?」とか、「清掃・清潔なんて同じことじゃないか?」という、何となくモヤモヤ感のある用語でもある。若い人は特にそうじゃないかな。「上司が5S5Sと喧しく言うが、何か納得いかん…あのオッサン、ホントに分かってんのか?」みたいな。

実は私もそういう「若干5Sに懐疑的なワカモノ」だったのだが、カナダに駐在していた頃、現地でも5Sを根付かせようということでカナダ人社員が「5S」を英語に置き換えて使っていた内容を聞いて目から鱗。はっきり言って日本語より遥かに肚に落ちやすい語用で、寧ろ日本人より彼らの方が5Sの本質を捉えていると言っても過言ではないレベルだったので、ここに紹介したい。

・整理=「Sort」 必要なモノといらないモノを寄り分け、必要なモノだけ抜き出すイメージ。エクセルで必要な情報のセルだけソートする、というアレである。

・整頓=「Set in order」 何らかの一定ルールに則ってモノを配置するイメージ。現場的にはシャドーボード(現場によくある、どこにどの工具を引っ掛けるかの絵が書いてあるボード)のような工具管理、事務屋的にはAに関する文書はファイルAに入れて棚Aに、Bに関する文書はファイルBに入れて棚Bに…といったところ。

・清掃=「Shine」 そのまんま。ピカピカに綺麗にしましょうと言うイメージ。現場にしても事務所にしても、障子の桟を人差し指で拭って埃を見せつける小姑のような意識が必要。

・清潔=「Standardize」 清潔=標準化。何で?と思うが、当時説明を聞いて感動した。自分一人だけで職場を整理・整頓・清掃して一瞬清潔になっても、他の人が全くそれらを理解していなければ散らかし放題で、当然自分が清潔にした横からすぐに元に戻って行く。標準化、即ち誰もが同じように整理・整頓・清掃できるようルールを統一して運用することで、初めて職場が「清潔」になるのである。北米の現場文化を考えても実に的を射た語用で、思わず膝を打った。

・躾(習慣)=「Sustain」 「躾」と言うと脊髄反射でself-disciplineとか思いついてしまうあなたは甘い。確かに日本語の「躾」の語感には近いが、これだと彼らにとっては押し付けがましく、非常にネガティブに捉えてしまうのである。とにかく肩の力を抜いて清潔な状態を無理なく持続しましょう、と言う意味でのsustain。ここ5年程でサステナブルなどというカタカナ英語が一般的になっているが、正にそのイメージである。

日本の製造業の復権を目指す工場技術屋兼中間管理職としては、5Sは工場の実力のバロメーターと考えている。監査等で初見の工場でも、私は現場を見る際には必ず5Sの状態を嫌らしく舐め回すようにチェックする。現場の予備品棚や工具箱も、(一応断ってからだが)抜き打ちで開けさせてもらう。これまで自社・他社とも多くの工場を見てきたが、国内外を問わず、現場の5S状態とその工場の管理レベル、引いては経営レベルは如実に比例するという明確な経験則があるからだ。

5Sは工場に限らずどこの組織でも管理・改善の必須ツール、正に空気のようなものであり、究極的には組織文化にまで昇華させなければならない。だからこそ、一人ひとりが肚に落とせる理解が必要だし、一人でも納得できない状態では「何ちゃって5S活動で定期的にお掃除やって、ハイ終わり」レベルから抜け出せることはない。そうならないよう、私は5Sを語る際はいつも英語の5Sを引き合いに出すようにしている。だってみんな肚落ちするんだもん。【了】

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