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怖いものは何ですか? 分かりあえるものですか?│『怪を訊く日々 怪談随筆集』


福澤徹三先生『怪を訊く日々 怪談随筆集』を読んだ。
福澤先生が身近な方から収集されたらしい怪談が計74話(数え間違いしてたらごめんなさい)収録されている。

話の内容としては、ぶっちゃけ「王道」な話が多い。時代ははっきりしないものもあるけど、昭和~平成のエピソードが多かった印象。
でも、王道だからつまらないかというと全然そんなことない。全話ともめっちゃ面白かった。

あくまで例えばですが、「真夜中に目を覚ますと、髪の長い、白い服を着た女が枕元に立っていた。驚いて逃げようとしたけれど体は金縛りにあって動かない。女はぶつぶつと何かをつぶやいて消えた。時計を見るとちょうど2時だった」みたいな話を聞かされたとして、「怖っ!!」ってなる人は今日日少ないと思う。
「またか」「知ってる」「隣の家に垣根ができたってね」「へえ」みたいな、そんなリアクションが大半じゃないかな。
でももし、髪の長い女を自分の目で見てしまったら。その女がどれだけ「いやいや貞子やん」みたいなビジュアルをしていたとしてもツッコむ余裕はない。きっと気が触れるほど怖いと思う。

何を言いたいのかというと、『怪を訊く日々 怪談随筆集』は怪談を聞かされているのではなく、追体験している感じが半端じゃなかった。だから全話面白いし、怖いものはすごく怖い。
その技術をぜひ盗みたいところだけれど、達人技すぎて何一つ見切れなかったよ。

また、自分で読んで「怖かった話」と「面白かった話」を振り分けていくと、自分の怖さのツボがわかってそれも面白かった。

個人的に特に怖かったのは『コンビニの女』と『刀』。

『コンビニの女』に感じるのは、おかしくなる、昔風にいうと浅ましくなることへの恐怖。それと、浅ましくなってしまった人やその事実から目を背けることへの罪悪感。

『刀』は映像でイメージするとシュールというかいっそユーモラス。『稲生物怪録』に出てきそうな、意図のよくわからない怪異。
でも「何を伝えたいわけでもなさそう」な無機質な感じがかえって怖かった。問答無用、純度100%の害意がそこら辺をふよふよ漂っているみたいな。

勝手に、前者を「明日は我が身系」、後者を「理屈が通じない系」とカテゴライズすることにした。私自身の恐怖のツボはたぶんこの辺りにある。

ちなみに、前者で最近「怖い」と思ったのは、『シン・仮面ライダー』のラスト、某元プロ野球選手のドキュメンタリー(ここに並べて良いのかわからないけど)、その他。こっちは割と身近なところにも多い。
後者は、『シン・ウルトラマン』のゼットン、クトゥルー神話のアザトース、妖怪だと座敷わらし、通り魔(通り悪魔)など。今のところは関りがないけれど、いつか来るかも知れないし来たらもう終わり。だから、今の内からじわじわと覚悟を決めておかなければいけない。気がする。

なお余談ですが、水曜日のダウンタウン的なノリで、「元ネタがわかりすぎている怪談(貞子、伽椰子、トイレの花子さん、皿屋敷のお菊さんなど)でも本当に出たらめっちゃ怖い説」を検証してみたい。
でも許可なく人を驚かすのは法に触れる気がするので、たぶんやらないかな。どんどんハードルを下げて最後は鬼太郎ファミリーとか、どこまでいけるか興味あるけどな。


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