見出し画像

時間とは? 〜ミヒャエル・エンデ「モモ」より

 秋の連続ドラマ「35歳の少女」というドラマは、小学生の時交通事故にあった少女がずっと昏睡状態となり、35歳になった時に目覚めるというお話で、心は小学生のまま、身体だけが35歳の状態の主人公が色々な人々との交流を通して、精神的に大人になっていくと同時に、主人公の周囲の人間も忘れていた純粋さなどを取り戻していくというストーリーです。

 さて、今回はこのドラマの中で、主人公が事故に遭う前に借りていた「モモ」という本について取り上げたいと思います。

 「モモ」はドイツの児童文学作家ミヒャエル・エンデの作品で、小学校高学年の夏休みの課題図書にも選ばれていますので、読んだことがある方も多いのではないでしょうか。私も小学校六年生の時に読みましたが、正直この作品は児童文学の枠を超え、大人が読むのにふさわしい作品ともいえると思います。

 この作品のテーマは、一言で言うと「時間」です。少女モモは、人の話を聞く能力に長けていて、モモに話を聞いてもらうと不思議と悩みが晴れるという。そこへ時間どろぼうの男達がやってきて、街の人たちから時間をどんどん奪っていきます。時間を奪うと言っても、その手口はなかなか狡猾です。誰もが持っている、売ることができる財産とは何か。それは時間である。時間を銀行に貯めていくと、命が延びる。そうやって、人から時間を奪い、人生そのものを奪っていく。そこでモモは、どうしたか。不思議な場所「時間の国」に導かれ、時間とは何かを悟り、時間どろぼうから時間を取り戻し、人々に時間を返すというお話です。

 作品の中には、大人になってから読み直しても心に響く名言がたくさんあります。いや、むしろ大人になったからこそ、仕事の勤務時間に縛られるようになったからこそ、痛切にその名言の意味を考えさせられるのかもしれません。いくつか抜粋したいと思います。



 時間を人間に平等に分け与えることはできるが、それをどう使うかはその人次第である。



 心がなければ時間を感じることはできない。



 人生でいちばん危険なことは、かなえられるはずのない夢が、かなえられてしまうことだ。

 一度に道路全部のことを考えてはいかん、次の一歩のことだけ、すると楽しくなってくる。楽しければ、仕事がうまくはかどる。



 ちょっといい暮らしをするために、命も魂も売り渡しちまった奴らを見てみろよ、おれはいやだな。



 時間とは、生きるということ、そのものだ。



 人間は一人一人がそれぞれ自分の時間を持っている。そしてこの時間は、本当に自分のものである間だけ、生きた時間でいられる。



 いかがでしたか。

 最近テレワークの推進で、自宅で仕事をされる方も増えてきていますが、オンとオフの切り替えがかえって難しくなり、本来の勤務時間が終わっても仕事を続けてしまう方もいらっしゃるようですね。テレワークのいいところは、通勤時間が短縮され、その分自分の時間が増えることだと言われているのに、これでは本末転倒です。

 一方勤怠管理をする側も、テレワーク等の在宅勤務を行う人たちの勤怠管理はどのように行うのか、頭を悩ませています。これは従来、勤怠管理を時間(勤務時間)で管理してきたためです。時間ではない何か新しいものさしで、勤怠管理を行えるような仕組みが必要になってきていますが、私たちは生きている限り、「時間」というものに縛られている。

 でも時間に支配されずに、時間の方を支配して、自分のものとする。そんなライフスタイルが今まで以上に今求められているのかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?