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Human Doing? Well Being

「大人になるほど不幸になるんだよ」とおじさんが言った。その時はあまりピンとこなかったけれど、えらく出世しているおじさんが言っていたから、きっと私たちは今過ごしているこの時間も不幸に向かっている。

Human Doing?

いい学校に入りなさい。一生懸命働きなさい。評価されなさい。お金を稼ぎなさい。結婚しなさい。子を産みなさい。育てなさい。育てるためにはお金を稼ぎなさい。

「あなたの夢は?何がしたいの?」「あなたのスキルは?」「あなたの貢献できるものはなに?」「え、もう結婚するの?はやいね。」「アラサーなのにまだ結婚しないの?」「子供は?」「もう子供産むとか生き急いでるね」「そんな突然産休取られても、今のプロジェクト大事なところなんだけどな」「男のくせに育休とってなにするの?」「あ、来週から地方に配属になったけど」

私たちは毎日頑張っている。頑張って人間をしている。日々、全方位から何を「する」のか問われ続ける日々に、きっとみんな疲れている。この世界に「いる」だけでは足りない。自分から世界に何か働きかけなければ、価値がないとみなされる。

あんまり気分がうまくいかないときに、あの時はよかったな、とふと昔の自分の笑顔が目をつむった目の奥に現れる。若くて何にも縛られなくて、自由で。毎日何が起きても笑えて、そこにいるだけで心の底からたのしかったなと思う。誰かにわかってほしくて共感してほしくて自慢したくなる。

「あの時代はよかったよね~朝まで働いてさ、あの上司のパワハラがすごくて。アハハ」

おじさんとの飲みの場で、おじさんが言った。

昔話にうんざりして乗った終電。

きっと思い出は誰の中でも綺麗で輝いていて、大人になればなるほど思い出は増える。26歳のわたしよりも2倍生きている”おじさん”には、きっと2倍以上の輝く思い出が目の奥にやってくる。そして26歳よりも2倍生きていると、同じように悲しみも虚無感もやってくるんだろう。自分の人生はこの”程度”という予測可能感の精度が26歳よりも倍、上がっているのかもしれない。その虚無に心がやられてしまわないようにおじさんたちは一生懸命お酒を飲み、綺麗な過去を思い返し、若者に自慢する。

おじさんも、毎日頑張っている。頑張っておじさんをしている。結婚相手、親の介護、子供、上司、部下、子供の受験校。全方位から何を「する」のか問われ続ける日々に、きっとおじさんも疲れている。

Well-Being

きっと、私たちは生きているだけで幸福になっていいはずだ。外野になんと言われようと、きっと、私たちはこの世界に「いる」だけで充分なはずなのに。

ねぇ、自らを呪って、不幸な世界を作り出すのはもう令和で終わりにしようね。





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