最後が何回あるんだよ 2023/10/06

複合的に腹が立っている。
眠たい。

会社の男の横顔が綺麗だった。鷲鼻と、唇への綺麗なカーブ。
他人の目線を恐れない男で、目が合ってにっこりするから私もにっこりした。

ネクタイを見て犬が好きかと聞いたら勢い込んで愛犬のことを話しだす男。毎日卵1パックを煮卵にして食べて1ヶ月で7kg痩せて計13kg痩せたらしい。
犬の可愛さを語る男は底抜けに頭が悪そうで生きやすそうだった。

横顔が綺麗な男と私が同じ大学出身であることをアホが漏らして、少し空気が凍った。
それは、その大学名を言うと他人との距離が開く、いつもの反応。
横顔な綺麗な男は、その空気を疎ましく思っているような雰囲気で、そしてまたそれに慣れてるような雰囲気で、私もでしょ、と言いながら流した。この男と共犯のようになるのは気持ちが良い。

服装が可愛いといつも見ていた女の子に、爪が全部自分の爪かと聞かれた。
馬鹿にされることに慣れているから挙動不審になって、え、そう、そうだけど、と目を泳がせていたら、爪の形が綺麗だと褒められた。
その子は私の服装が好きでよく見ているんだと言ってくれた。私は嬉しくて、私も彼女を見ていたことを話した。
彼女と目が合う時に変なところを見ていると思って憂鬱な気持ちになっていたけれど、爪を見ていたのだった。
私あなたのこといつもよく見てるんですと言ってくれたのが嬉しくて、ホームのような心地、打ち解けて一気に会話しやすくなった。

顔のかわいい女が可愛さを自覚したでかい声と勢いでこちらにきた。
雑誌に寄稿していた文がよかったと褒めたら、「ええ〜ここの人たち、神様みたいに優しい!みんなこんな優しいんですか!」とデカ声を出して身を震わせる。
「かわいい写真と釣りが趣味ってギャップもいいですよね」と服を褒めてくれた子が言って、私は自覚女の目に満足の色が浮かぶのをみる。
なぜかわいい子はおじさんっぽい趣味をあえて身につけて他人がそれを知ってギャップに驚く、というところに快感を得るのだろうか。
前に会社にいたクソほど顔がかわいい同期も、油そばが好き、バーガーキングが好き、ということで、みんながええ〜と驚くその反応に愉悦の表情を浮かべていた。
しかし、あの現実離れしたとまで言えるかわいい同期がここにいたら、この自覚女はどんな挙動に出るんだろう、と私は冷えた目で女の黒目の底をみる。
そういえば、こうして他人と比べられるような飲み会の場で、いつもあのかわいい同期の彼女はたまたま不在だった。
デカ声で身を震わす女が、「みなさん上司で困ってないですか!?同じ、同じ、女ですから!話聞きますからね!」と言ってくる。
大方、向こうの席で散々上司の悪口を聞いて盛り上がったに違いなかった。
私と女の子が特に困っていないというと、予想外の反応に困ったようにしているのが面白かった。悪口を養分にしてイキイキとする女たち。
女の髪が何度も私の水と烏龍茶に入る。私は途中から考えるのをやめて、目を逸らして見ないようにしていた。
「髪の毛、入ってるよ!」
不意に、横顔の綺麗な男が指摘する。私は、スッとする。
2リットルペットボトルの水!?美容のため!?
いや、喉が渇くから
と答えたら爆笑されて喉が渇くからだもんねえとあてこすられて、腹が立つ。
誰のための律儀なんだよ。

仕事のできる新人の男が大学生みたいな飲み方をして、周囲に媚びる。
マッチングアプリでのありがちな失恋の話を聞き、私は秋江くんのことを思っている。
ここで私が付き合ってる人はいないけど養っている天才がいると話したらどうなるのか。変な優越感を持つ私がいる。優越感を持つようなものでもないのかもしれないけど。

りんご二分の一のアップルパイが美味しい。だから結局、食べることでしか自分を満たすことができない。小さい頃からぐずると食べ物を与えられてきた。呪いを解くのはかなり難しい。環境のせいにしたいのかよ。甘えている。

仕事を本気でやりたい人間を制する女に私は何を言えるか。

ぶつかってきた男を反射で突き飛ばす怖い男。

顔が濃くて良い笑顔を浮かべるスタバの店員。
ギリシャを連想する。

秋江くんはお礼が不足している今。しんどくなる。しんどい。

2023/10/06 2258

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