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【企画参加】鳥獣戯画ノリ①

我が高校はこの季節、水泳大会と陸上大会の両方が開催される。僕は水泳、親友のA太は陸上に振り分けられた。運動が苦手な僕らにとってこの時期は憂鬱以外の何ものでもない。

大会前日、A太は僕を裏庭に呼び出した。なにやら読めない文字と兎と蛙の古風な絵が印刷してある和紙を握ってる。中から出てきたのは小さなお札型の海苔だった。

「これは真言密教の呪術がかけられたありがたい海苔なのだ。これを当日の朝食べると蛙のごとく水に馴染み兎のごとく足が速くなる。今年こそは俺らを馬鹿にしていた奴らを見返してやるのだ。」

どうやら老舗海苔会社が、鳥獣戯画を真似たイラストと梵字を組み合わせた和紙で包んで高級感を出し売り上げを伸ばそうと画策したらしい。それにネットが面白がって嘘話をでっち上げたのだろう。

運チと馬鹿にされる辛さは僕も身に染みてる。だから僕は礼を言ってそれを受け取った。

当日。

海苔を食した僕は鮫に食われる兎のごとくプールで溺れ、B太は蛇に睨まれた蛙のごとくスタート地点で立ち尽くした。僕らにかけられる不名誉な言葉を挽回するのはまだまだ先のようである。

*こちらの企画に参加させていただきました。

早々に素晴らしい参加作品を目にしてしまったので、多分あれ以上のものは書けない。箸休めにどうぞ。

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