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Shot!

僕の名前はピート。13歳。趣味は写真を撮ること。最近はもっぱら隣の家のアネッサの姿をこっそり撮るのが僕の日課になっている。盗撮だって?口が悪いな。僕みたいな何の取り柄もないヤツが、アネッサみたいな綺麗な子に相手にされるわけがない。せめて写真だけでもという哀しい恋心だよ。

アネッサは最近元気がない。パパの再婚相手のバーバラと上手くいってないみたいなんだ。アネッサのパパはお金持ちで、家にほとんどいない。広い家なのにアネッサはひとりぼっちでディナーを食べている。ほんと、可哀想だよ。

今日はパパが帰ってきたみたいだ。アネッサはまだ帰ってない。おや?パパとバーバラが言い争ってる。バーバラが部屋の奥に消えた。パパは渋い顔をしてバーバラに背を向けて紅茶を飲んでる。すると、急にもがき出した。苦しそうに蹲っている。バーバラはたっぷり10分は待って救急車を呼んだ。

アネッサのパパが亡くなったと家に連絡が来た。なんでも心臓発作らしい。バーバラが毒でも入れたんじゃないかと思ったがそういう痕跡はなかったみたいだ。アネッサは離婚したママのところで暮らすそうだ。もう会えなくなるのが寂しい。

お葬式からしばらく経つと、隣の家に若い男が出入りし始めた。2人で小さなグラスで酒を一気に飲んではいちゃついてる。なんだか嫌な感じだ。パパが死んだばかりなのに。アネッサのいない今、僕はカメラに興味をなくした。隣を見ることもなくなっていた。

激しく言い争う声が隣から聞こえてきた。思わず覗き込むと、バーバラと男が怒鳴りあっている。誰かが警察を呼んだみたいだ。玄関で2人が警官に話している声がする。その時は、それで終わったんだけど。その日の夜、銃声が静かな住宅街に響き渡った。僕も目を覚ました。しばらくして沢山のパトカーが隣の家に乗り入れ、警官が慌ただしく出入りした。何事かと近隣住民が集まったけど立ち入りは許されなかった。カーテンというカーテンは全て閉じられ中がどうなってるのか皆目わからなかった。

新聞によると、若い男はバスケットボール賭博の負けがこんでバーバラに相当借金をしていたらしい。返済に詰まってバーバラとは何度か大喧嘩になり、イラついた男がバーバラに発砲、バーバラは即死。男は逃げたが捕まった。

隣の家は売家になった。未だに空き家のままだ。アネッサはもう帰ってこない。僕の手元には彼女の画像だけが残った。1枚だけとびきりの笑顔で写っていたのがあった。この時、彼女は何を笑っていたのかな。

もしも、万が一、嘘でも神様がまた会わせてくれたら、その時はデートを申し込もう。そして二人で写真を撮るんだ。そう、とびっきりの笑顔で何枚も。

神様、いつか、そんな日が来ることを夢見るくらいは許してもらえるよね?僕が何も出来なかったグズ野郎だったとしても。僕が大人になるまでアネッサを守ってやって下さい。どうかどうかお願いです、神様。





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