見出し画像

割れる

専業主婦が楽だなんて大嘘だ。

家族の朝ご飯の準備、洗濯機を回しながら上の子と旦那を見送る。子どもの保育園へ行く支度の世話、ぐずる子をなんとかなだめて保育園に送った後、ようやくご飯、洗い物、洗濯物干し、掃除。

歩いて5分の義両親の家へ。義母が腰を痛めてから、買い出しや炊事は何もかもが私頼み。昼食と夕飯の準備をしてから帰る。晩ご飯の材料や日常品を買い、クリーニング店に回って旦那の上着を取り、ようやく昼食。

風呂洗いやゴミの始末、家の片付けをしていると上の子が学校から帰ってくる。おやつを出して食べ終わったら宿題を見る。配付物の点検。この時間に見ないと親子共々後が辛い。

保育園バスを迎えに行き、下の子を遊ばせながら夕食の支度。上の子が遊びから帰ってくる。夕食をすませるとお風呂タイム。後片付けをすませ、下の子の体を拭いてやってると旦那が帰ってくる。旦那の夕食を出し、後片付け。私がお風呂に入るのは一番最後。

夫は、もっと時間を上手に使って余裕を持てだの、Aちゃんのお母さんはお前と同じ歳なのに身綺麗にしてる。なのにお前はだらしないだの勝手なことを言う。

Aちゃんママが綺麗でいられるのは、実家暮らしで実のお母さんが手伝ってくれるからだし、他の家では旦那さんが協力的で自分のことは自分でするし、家事もしっかりやってるからで、そんなに言うなら少しは家のことをしてよと言うと、俺は忙しい、家のことをするのはお前の仕事だろう、何のための専業主婦だと喧嘩になる。

やることは無限にある。それなのに達成感がない。家族のために労働しているのにするのが当たり前で感謝されることもない。そのくせ、少しでも滞ると不機嫌になる。喧嘩になるのが嫌で黙ってるけど、小さな不満は少しずつ私の中に溜まっていく。洗濯機に溜まるゴミのように。

ある日の買い物帰り、私の体はポンッと音を出して弾け、無数の鳥が中から飛び出した。鳥たちは思い思いの方向へ飛んで行く。どれも私。私は自由だ。

私のうちの一羽が電線に止まり家の方を見ると、夜になっても洗濯物は干しっぱなし。家では下の子が泣いていて、上の子はコンビニの濃い味つけの弁当を猛然とかきこんでる。多分宿題はしていないだろう。夫の実家からくる電話が鳴り響いてる。疲れた顔をした夫が呆然とベランダからこちらを見てる。

鳥が夜目が見えないというのは嘘だ。全てはクリアに見える。多分人間だった頃よりも。私が羽ばたくと無数の私が羽ばたいた。もう戻るつもりはない。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?