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松本清張 未刊行短篇集を読む

昨年末、松本清張の短編朗読を聴いた。とても面白かったので、短編集があれば読んでみたいと思ってた。

幸い、図書館にあったので借りてきた。有名な作品集は他にもあるのだろうけれども、2022年初版と比較的新しく出版されたもので、「未刊行」という言葉に興味がそそられた。

内容が多岐にわたって面白い。解説を読むと、ほとんどが1950年代から70年代に雑誌に掲載されたものらしい。その時代を感じさせるが面白く古びてはいない。知らない世界を垣間見るようで楽しい。

読んでいて思ったのだが、松本清張は読点の使い方が上手いように思う。

書いていて難儀するのが、この読点(、)というやつである。作家によっては、わざと読点を使わず長い一文をずらずら書く人もいる。それはそれで好きである。しかし、文にリズムがないとそれはただ、だらだらしただけのものになる。自分の場合、書いていてどうも読みづらい気がした時に読点を付け足すのだが、根本的に付け方がわかっていない。

清張作品を声に出して1ページほど読んでみた。読点で息をつくとちょうど良い。読みやすい。声に出して気がついたのだが、同じくらいの字数でも読点の数が違うところがある。そこで一息ついてゆっくり読んで欲しいところと一気に読んで欲しいところにわけてるように思える。

読点がなく一息に読むところは、主人公の(ひいては作者の)なんらかの感情が感じられるところだった。特に悲しいとか頭に来るとか直裁的には書いていないけれども、文末の表現からなんとなくその気持ちが察せられる。ふうむ、凄いものだと思った。簡潔で明瞭な文章で余計な感情を書いたりはしないが伝わるものがある。時代のせいもあるのかもしれないが、「大人」の文章という印象を受ける。

若い頃は時代の先端をいくような軽くて展開が早くてわかりやすく刺激が強いものを好んだ。今はごつくて重みのあるものを読みたいと思う。年を経れば好みは変わる。

松本清張は、直木賞をもらったんだろうとばかり思っていたら、大間違いだった。なんと、芥川賞作家だった。芥川賞は純文学というイメージがあるのでどうにも頭の中で一致しなかった。うーん、何を書いてもらったんだろうと興味が湧く。

簡潔にわかりやすく書いているにも関わらず、面白くて惹き込まれる。何故だろう。やはり丹念に取材を重ねて想を練ってるからだろうと思う。たまに難しい言葉が出てきて部首からこう読むだろうと推測し検索して調べながら読む。自分の無知にがっかりしながらも、知らなかったことを、知るのは楽しい。

短編は捨てるところがない。ゆえにこちらも丹念に読まなければならない。長編だと興味のないところは読み飛ばしてしまう。

やはり読書は面白い。結論はこれ。

<追記>
読み終える。最後の一作品は自伝としての短編だった。新聞社に勤めていたけれど、新聞記者としてではないようで、訂正。自伝を読み、ますます松本清張に興味を持ち、作品を読みたくなった。

ついでに言えば、読書感想文のタグ付けをしてはいるものの、これが本当にただの「感想」でしかなく内容にほとんど触れていないのはご容赦いただきたい。書きぶりに感心して、自分のための覚書として書いている。
内容は本の巻末の解説に丁寧に掲載されているので、お忙しい方はそれを読めばおおよその見当がつく。

もともと感想文書くのが苦手で、高校時代、解説を丸ごと引用して提出したのを思い出した。読書感想文は今でも苦手である。









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