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保護者面談では子どもの良いところをたくさん話そう

7月、8月を目前にして、夏休み期間を利用して三者面談をする高校は多いのではないでしょうか。コロナの影響もあって、ZOOM面談なんていうのもちらほら聞きますが、私の周りの公立学校でも勤務校でも、実際のところは今まで通り保護者が来校し、担任と教室で面談する形が多いようです。

コロナが更に猛威を奮っている現状を考えると、なぜリモートでしないのだろうと思ったりもしますが、実際のところ「じゃあ、今学期の面談はズームで」と連絡されて「はい、分かりました」と言える保護者がどれだけいるかと考えれば、こうなるのも仕方ありません。公立高校には色々な経済的、社会的背景の生徒がいますから、(危険を冒してでも)電車に乗って、学校に足を運ぶことが最も公平な方法であるという暗黙の了解値のようなものが存在しています。

担任にとって三者面談は夏の重要イベント。面談で何十人もの保護者と毎日顔を突き合わせて話をするのは大変ですが、楽しくもあります。ただ話を聞いているだけに見えて、教師って保護者の観察をしっかりしてしまうものなんですよね。

「あの元気な生徒の親はこの人か。同じタイプだな。」とか「やっぱりあの生徒の保護はしっかりしてる!」とか「あの生徒はよく授業で寝てるのに親はしっかりしてるな、家庭は問題なさそう?」とか「この人が先日クレーム言ってきた人か、気をつけねば…」などなど、頭の中は結構忙しかったりします。

保護者の子どもに対する熱量に差はあるものの、進路相談はどの家庭も一生懸命話をしてくれます。

親子関係が良好で、学業も申し分無い場合には話はスムーズに進むのですが、そうで無い場合はしばしば親子バトルの落とし穴に陥ります。

親は子どもの事を心配してか「そんな大学無理に決まってる」とか、「お前は何にも考えてない」とか「頭悪いのに…」なんて言いはじめます。往々にしてこういう場合は親が自分の立ち位置を守りたいがためという意図がある時もあります。それに「大学は無理」には実際「大学には経済的に行かせてあげられない」の意味であることもありますし、「あなたは何も考えていない」には「もっと自分でやりたい事を見つけてごらん」という激励の意味である事もあります。ただ、子どもたちはそんな風には読み取ることはできません。

言い返しても親の方が強いのが親子の力関係というもの。もしかしたら、それは家庭での日常会話なのかもしれませんが、担任の目の前で親から自己否定された生徒はどんな気持ちでしょうか。そんな時、どんなに体の大きな生徒でも親の横で小さく俯いているものです。見るに耐えかねない風景です。

そんな風景に出会ってきた経験から一つ言える事は、教師は保護者が気づいていない生徒の魅力を知っているという事です。高校生にもなると、家で過ごすより学校にいる時間の方が部活動も入れるとはるかに多くなります。そして、高校の3年間、生徒は心身共に大きく成長します。保護者の方が見えていない場面があっても当然です。教師の方も家庭で過ごすより学校で生徒と時間を過ごしている事の方が多くなるぐらいですから、多感な時を過ごしている高校生には毎日、様々な喜怒哀楽があります。そして、その生徒の喜怒哀楽の様子に毎日毎日、楽しませてもらっているのが教師という職業だと思うのです。

保護者が「大学は無理」と思っていても、本当は進学したいと思っている事を担任は知っているかもしれません。結果は出てなくても、実はコツコツと努力している姿を見ているかも知れません。

「何も考えてない」ように見えて、本当は自信のない自分にどう向き合うべきか考えている時ということに気づいていることもあります。周りのクラスメイトが進路決定していく中で、自分はどうすればいいか考え出そうという様子を見ているかも知れません。

「頭が悪い」と思っていて、実際に成績が奮わなかったとしても友達に恵まれる人柄が多くの先生や生徒から好かれている存在である事を知っているかもしれません。

保護者面談ではこの様な、ご家庭で見られないお子さんの良いところや魅力に目を向けられる機会であれば良いなと思います。

経験から言って、短所については保護者と教員と合意する事が多いのですが、長所についてはすんなりとは合意に至る事は稀です。教師の前で子どもを褒める親は日本には滅多にいませんが、面談では目の前で子どもをほめて、認めてあげて欲しいと思います。それだけで、子どもの中で何かがかわったりするものなのです。

進路実現は難しい課題です。高校生は、挑戦してみたい事やこうなれば良いなと思う事はあっても、経済的にも社会的にも完全には親の意思決定から自由なれず、実際はかなり不自由な存在でもあります。

学校の成績や、それによって規定される生徒の能力だけでなく、個の魅力や長所に目を向け、それを伸ばすためにできるだけたくさんの大人のサポートを受けることで、一人一人の生徒が自己実現できる学校であれば良いなと思います。

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