見出し画像

BOOK REVIEW 11 :「空気」の研究

「空気」についてどハマりし、「空気を読む」とは何か。日本人はどんな空気を、いつ、どのように読んでいるのか。どのような時に「空気を読めた」と言えるのか。空気はどのようにして生まれるのか。そして、何よりも「空気」と学校や授業との関係性についてずっと考えています。

とりあえず、これは読むしかないと手に取ったのはこちら。

「空気の研究」作者は山本七平。ものすごく昔に、「日本人とユダヤ人」を読んだことがありましたが同じ著者と気がつくまでに暫く時間がかかりました。

出版年は1977年と大変古く、読みづらいところもあったので、こちらも購入。

この「空気」の本では第二次世界大戦で戦艦大和が勝ち目がないとわかっていながら負け戦に挑んだことが何度も触れられています。「日本の敗戦はもはや確実」だったにも関わらず作戦決行し多くの犠牲者を出しました。負けると科学的に分かっているにも関わらず、なぜ「あの時の空気ではああせざるを得なかった」のかを検証しています。

当時、大和は日本の最先端の戦艦。一億玉砕をうたっている「空気」では「戦わない」という選択はできなかったし、戦わずしてアメリカに捕まるという選択はありませんでした。これは日本人ならわかる「空気」ですよね。でも、それで簡単に、多くの命を落としてしまうのも「空気」。恐ろしい。

また、これは別の話ですが、特攻隊として相手を駆逐して何度も帰還した兵士がいたそうですが、無事に帰ってきのに「(特攻隊なのだから)帰ってくるな(死んでこい)」と怒られたという話も「空気」を表しています。

つまり、「空気」があるときは(そしてだいたい日本には「空気」がどこにもでもあるのですが)結論ありきなのです。
決められた結論(本音)に向かって議論をする(建前)。
この本には日本の議論はダブルスタンダードだと書かれていました。これは、学校でもよくあること。
日本に議論がないのは「空気」のせいなのですね。あ〜、目から鱗。

🌟 空気は「絶対的な前提」である。人々が「前提」が存在すると考えることでそれは生まれ、その「前提」に支配される。→ 「空気」の正体
🌟「空気」に都合の悪いものは全て無視される → 議論が生まれない
🌟「空気」の存在はアニミズムに発する。→「臨済感」
🌟「空気」= 絶対的な存在 → 相対化がない

「空気」は前提であるがゆえに、しかも「絶対的な」前提ですから、それが正しいと信じ込みます。そして、周りの人もそれを正しいと思っているだろうと信じることで成り立ちます。つまり、空気がある以上、そこに多様性も議論もへったくれもありません。盲目的に自分が正しいと信じることなのですから。

一緒に働いているALTにこの話をしたら、批判的思考を叩き込まれている自分たちにとったら驚きでしかないと言っていました。
そうだろうな〜。

そして、学校でも「空気を読む」ことを暗黙のうちに教えているとしたらどうでしょうか。

空気はどこの国にもある。それが国を滅ぼすこともあるためにおそらくよく研究がされてきたに違いない、しかし、日本は第二次世界大戦までそのような危険に晒されることがなかった。だから、いまだに「空気」が生きているのではないか、とも書かれていました。そしてこれが40年以上前に書かれているのですから驚きですよね。

「空気」に対抗する存在は「水」です。「水を差す」といえば、現実に引き戻す力のこととして、この本では使われています。ただ、水は完璧に現実に引き戻すことができるものでもないようです。

「超」入門 空気の研究では、「空気」を打ち破るには新しい価値観や視点、テクノロジー、社会傾向や外的要因など相対化できるものが必要だとのべられてていました。

「教育」も空気を打ち壊すための一手としてできることは多くありそうです。

空気の勉強はまだ続きます。

Teachers of Japanではティーチャーアイデンティティ (教師観)の発見を通じて日本の先生方がもっと自分らしく教育活動に専念し本来は多様である「教師」の姿を日本国内外へ発進しています。日本の先生の声をもっと世界へ!サポートいただけたら嬉しいです。