2018年 啓文堂文芸書大賞を受賞しました
嬉しいご報告です。「わたし、定時で帰ります。」(新潮社)が啓文堂文芸書大賞をいただきました。啓文堂書店の皆様、そして店頭でお買い上げくださった皆様、ありがとうございます。
この小説の執筆は、私が極度の過労状態の頃にはじまりました。登場人物の1人である三谷佳菜子は、まさにその時の私の気持ちを代弁してくれているキャラクターです。高熱が出ても、決して有給をとらない理由を彼女はこう語ります。
「こんな私を雇っていただいたということを忘れずに、分相応のふるまいをしなきゃいけないって頑張ってきたんです。社員としてあるべき姿を追求してきたんです」
私は当初、彼女のような社畜を主人公に書こうとしていました。でも、連載当時の編集者さんたちとプロットを第1稿、第2稿と詰めていくうちに、ふしぎと、どんな空気の中でも「定時に帰ります」とゆるっと言える主人公になっていきました。
過労死するまで働いてしまう自分を止めてくれ、という私の心の叫びが生んだ主人公が、東山結衣だったんだと思います。
そして、ゲラを読んだ新潮社の営業部と宣伝部の社員さんたちが「これを売ろう」と言ってくれ、デザイン部の社員さんが、新しく加わった単行本担当編集者さんと、働き方についてのアンケートを反映した装幀を作ってくれました。他にもたくさんの方が色々な形で関わってくださっています。
なので、私1人でではなく、プロジェクトメンバー全員の総力戦で受賞したという気持ちが大きいです。そして、パワーあふれる装画を描いてくださったマキヒロチさんに改めて感謝します。
長くなりました。主人公の結衣ならきっと言うでしょう。
「とりあえずビールで。素敵な賞をもらったことに、かんぱーい!」
今日から2ヶ月、啓文堂書店さんの店頭で受賞フェアをやってくださいます。ぜひお立ち寄りください。
朱野帰子