とるにたらないもの

柔らかい嘘つきは嫌いだ　

せめて彼が不幸であって欲しい

浮気者には性病の天罰を

そして誠実なものには何か救いを

そんな言葉は聞きたくないんだ

せめて上手い嘘をついてくれ

うまく誤魔化したつもりでも

その歪な刃先で刺されては

治る傷も治らないから

夢であったあなたは

レモネードみたいに優しいのだろうか

それともカルピスみたいに

後で喉に引っかかるのだろうか

どちらでもないといいけど

というか夢でも会いたくないけど

忘れてしまった過去のこと

わたしってもう29歳

明日は私の誕生日

周りはたくさん結婚していて

私はそんなのどうでもよくって

デパートで肌を褒められて

服屋でスタイルを褒められて

かわいいネイルをして

でもあの人のことは忘れられなくって

今日は映画を見に行くの

バスに乗って隣町で

べっとりとしたラブストーリー

ギラギラしたアクション映画

甘くないサイエンスフィクション

どれもどれも私を

私たらしめるもの

映画館で飲んだコーヒーは

思いの外にがくって

帰りに寄ったドーナツ屋で思ったの

私の吐息、彼にそっくりだなって。