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ぼんやり

心を亡くすって、なんとも切ない漢字だと思う。昔お世話になった先生の名前を思い出せなかった時。当時一番仲良くしていた友達の顔が、はっきり想像できなくなった時。二度と消えることがないと思っていた未練を感じなくなった時。私はあの時、あの人といた瞬間の心を亡くしてしまったんだと実感する。どんなに一緒にいても、濃い時間を過ごしても、その先の自分になにがどれだけ残るかはしらない。その1分1秒、確かに私は誰かと言葉を交わし、心を交わし、今の自分を形作っているはずなのに、期限が切れれば勝手に消えていく。今日までのたった18年間でさえ、きっと数えきれないほどの何かを忘れてしまっている。自然的にも、意図的にも。好きだったあの人の匂い、声、癖。忘れたかったし、忘れたくなかった。私が渡した言葉の一つも、忘れてほしくないと願ってしまう。
何かを忘れたいと思う自分。
誰かを覚えていたいと思う自分。
君に覚えていてほしいと思う自分。
いつかは忘れてほしいと思う自分。
そうやって今の自分がある。これからもそう生きていくんだろうと思う。自分の心の中に残る何かをくれる、そんな人に出会いたい。誰かの心の片隅にそっと残る、そんな人として出会いたい。たまにでいい、ほんの一瞬でも思い出して、また会いたいと思ってもらえるような時間を過ごせる人に、なりたいと思う。




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