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こんな夢をみた 地獄の風景

そこは明るかった
陽射しがある、というのではなく
四方八方、発光しているように明るかった
暑くもなく、寒くもなく

ひろい野原に、人が整列している
ボロ切れのようなものを身にまとって
髭も髪も伸び放題
労働に酷使され、くたびれた体をようやく起こしているようにも見える
しかし緊張したように整列している
よく見れば、みんな白人だ
がっしりした臥体の者もいれば
でっぷりとたるんだ腹をボロ布からはみ出たせている者もいた

列の袖にいた監視官が指笛を鳴らした
彼の合図の下、整列していた者たちは
自分の足元の畝を掘り始めた
何やらの農作業をはじめた

列の中の一人が、突っ立ったまま動かなかった
もうこれ以上はやってられない、動けない、そう言いたいようだった
すかさず監視官が飛んできた
そう思う暇もなく
すでに監視官の足蹴りがその白人の顔面をヒットしていた
その監視官は、マサイ族のような長いヤリを持って
赤い見事な刺繍の入った衣装を細い体に巻き付けていた
細く華奢な体によく鍛えられたバネのような筋肉
精密なマシーンが標的を正確に射抜くように
監視官の膝が白人の顔を貫いた
その衝撃で、白人の眼球が飛び出し、のけぞり帰った
白人は苦しみと衝撃で嗚咽し、顔面から飛び出した眼球を
一生懸命に手で押し戻そうとしていた
しかしそれは許されなかった
監視官が、その美しいしなやかな肢体を踊るように舞ったかと思うや
二発目のキックが更に顔面に直撃していた
監視官は表情ひとつ変えず、直ちに農作業を始めるよう指示した
白人は顔面から眼球を垂らした状態のまま農作業をはじめた
整列していた他の者達は、人のことなど構ってられないと
黙々と自分の目の前の畝を掘り返していた

ここが地獄の風景であることに気づいた
前世の地上で、経済力と軍事力にものを言わせて
アフリカやアジアの植民地で人を捕獲し奴隷のように酷使し
その収穫を搾取、富と贅沢を貪った
それが、今ここで農作業をしているこの人たち白人
そして、生まれてから死ぬまで働き詰め
満腹に食ったこともなく
姉や妹は売り飛ばされ、働けなくなったらゴミ捨て場に廃棄
人として扱われることがなかった、その人が監視官

わたしが見たのはここまで
あまりの恐ろしさに目が覚めてしまった
なぜ地獄を見たのか、しばらく考えていた


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