聴くことが大事なコンサルタントとコーチという在り方
自分の仕事は聴くことだ、と思う。
コンサルタントとして企業の支援をしながら、コーチをしていて、どちらの時間も聴くことがとても大切で、それが仕事の肝だとも思う。
どちらにも共通して大切なこともあれば、違いもある。そんな聴くことを大事にしている私の仕事の話。
コンサルタントとしてクライアントと共にある日々
平日の9時から18時を基本として、企業と戦略を考えるコンサルタントの一員として仕事をしている。基本的には会社のチームで仕事をしていて、3人や4人くらいのチームでクライアント企業の戦略策定や事業改革を支援している。
こんな風に書くととても難しい仕事をしているように見える。けれど実際は、クライアントの事業の悩みや将来の目標を聴くことがメインだ。そしてその課題や目標を一緒に明確にしていく、それが仕事。
もちろんただ聴くだけでは価値がない。しっかりと実現に向けて、たくさんの情報を集め、吟味し、戦略を立てていく。けれど戦略を立てるためにはまず思いを聴かないとどうにもならない。
企業向けだからこそ大事なのは一つ一つの決断に必ず莫大なお金が動くということ。その企業にもたくさんのお客様がいて、そして従業員の家族がいて、株主がいてそんな生活が懸かっている。
だからこそ数字で納得をすることや論理で整合させなければならない場面が多くある。数多くの人の合意を得るためには、正しいと誰もが思えることが正しさになる。
もちろん数字は作れるし、論理も一定は作れるけれど、しっかり論理的にストーリーを作り、ロジックで補強して、そんな一つのストーリーを作っていくのが仕事だ。
クライアントといる時間も長いけれどそれよりもチームでの時間が長く、より聴くことが重視される
こんな風にクライアントと仕事をしている毎日ではあるけれど、より大事なのはチームで仕事をすること。チームでの議論の時間が結構多い。
議論となると自分の意見を言うことがもちろん大事だとは思う。けど一方でしっかりと深い議論をするためには相手の話を聴くことももちろん大事で。相手の話を聞かずに自分の話だけをしていてもそれは議論にはならない。
コンサル業界ではいちいち意見にロジックや根拠が求められる。だからこそ苦しいけれど、それさえあれば若手でも意見を言うことが出来るのが良いところでもある。
だから自分の意見を言う楽しさがある。そしてこの自分の意見を伝わるように話すためには相手の現在地がどこにあるのかを知ることもとても大切だ。
チームメンバーがどこに向かっていきたいのか、どんな成果物をクライアントに出したいのか、しっかりとゴールを分かったうえで意見を言うと伝わりやすいし、話が前に進む。
だから自分の意見を言うためにも相手の話をしっかりじっくり聞き、それだけではない相手が口に出してはいないような思いにも気が付くことがとても重要だと思う。
チームメンバーの言えていない・出せていない思いや考えを論理とロジックで愛をもって叩くのがコンサルタントの仕事とも思う。
コンサルタントとコーチで共通する聴く力
コンサルタントの仕事を書いていくと、コーチと似ているなと思う部分は多々ある。
まずクライアントの抱えている課題や目標をしっかりと聴くことが大切であることはコーチであってもコンサルタントであっても共通だ。そしてそのクライアントの中にある声が大事というのも一緒だ。
こんな風に平たく書くと、どんな職業であれ、人の話を聞くのは大切だ!となると思う。ただ一方でコーチとコンサルタントはどんな職業よりも何よりも深く話しを聴く必要があるとも思うのだ。
コーチもコンサルタントも形あるものを売っているわけではない。クライアントの中に眠っている想いを形にすることが仕事になる。そしてそれは普段クライアントが口にできていないような奥底に眠っているところにフォーカスする必要がある。
自分のことは自分がよくわかっているよ!と人は良く言う。もちろんそうだとも思う。しかし一方で自分では気が付けない死角があるのも人間だ。
コーチとコンサルタントはその死角に光を当てていくことに価値がある。その死角に光を当てて、見えていなかったものを形にしていくことに対価をいただいていると思う。
コーチとコンサルタントの違いはどんな形にするかの違い
コンサルタントが形にしていくものは、クライアント企業の事業計画書になることが多い。数字で未来を語る。ロジックの通ったストーリーで経営陣や株主を納得させられるような資料を作る。
企業の想いが叶うように、ストーリーをロジック立てて作る。正しさを追求していく。
コーチの場合は企業のような集合体ではない、クライアント単体の人生に寄り添う。だからこそ必ずしもロジックとか正しさだけではない。人と企業は一番大切にしているものが違うと思う。
それこそが感情で、感情は大切だ、とだれもが思っているはずなのに少しずつ忘れていってしまう。向き合うことに忘れて置き去りになってしまった感情に光を向けてあげることがコーチのできること。
コーチが形にするものはクライアントの感情だと思う。
論理や正しさだけではない、感情という不安定で不確定なものを取り扱う。だからこそ答えは一つではない。
コーチングではDance in the Momentという表現が使われる。コーチとクライアント二人で作っていく即興のジャズセッション。同じテーマであってもコーチによってたどり着くところはきっと違う。
それがコーチングの面白さだし、ある意味怖さだとも思っている。
心地よいDance in the Momentをクライアントとして、クライアントの感情に光がちゃんと向けられるように、聴く力を発揮して引き出して、そんな関わりができるコーチになっていきたい。