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『三国志の王に転生したら、家臣から溺愛されてます!』第2話(創作大賞2023漫画原作部門応募作品)

【第二話シナリオ】

■場面転換 (城内の大広間)

玲奈<どうやら私は、三国志のゲームの中の世界に転生してしまったらしい>

玲奈<髪の色や顔立ち、体型などを自分の好みに作ったキャラを、三国志の登場人物のポジションで動かせるゲーム。
私はレベル上げまくって、魏王の曹操として家臣をいっぱい持つところまで成り上がったのよね>

鏡に映った自分を眺めて、頬を撫でる。

玲奈<ゲームなのをいいことに、めちゃめちゃ可愛いビジュアルにしちゃったから、なんだか恥ずかしいな>

綺麗な茶髪ロングウェーブ、大きな緑の瞳、白い肌に細い腰。

夏侯惇「何をさっきから一人で百面相してるんだ」
鏡を見ている玲奈を覗き込む夏侯惇。

玲奈「わわっ…夏侯惇さん」

夏侯惇「いつも俺には敬語でないだろ。朝の儀の時から様子がおかしいが、熱でもあるのか」

玲奈の額に手のひらを当てる夏侯惇。

玲奈「ね、熱はないから大丈夫です…! いや、大丈夫、よ!」
動揺して口ごもる玲奈。

玲奈<そりゃ急にこんな状況になれば、冷静でいられないよ!>

玲奈<でも、本当にかっこいいな、夏侯惇さん…。凛々しくて、たくましいし…。
ろくに恋愛もしたことがないし、こんなイケメンと話せるだけで緊張しちゃう>

楽進「曹操様!こちらにおられましたか!」

楽進が二人に駆け寄ってくる。

夏侯惇「楽進か、そんなに急いでどうした」

楽進「夏侯惇さんもこんにちは!お話よろしいでしょうか」

人懐っこいで笑顔で話しかけてくる楽進。

玲奈「楽進さん、どうしましたか?」

楽進「曹操様のために、後宮を用意いたしました」

玲奈「こ、後宮?」

意気揚々と楽進が手を叩くと、ずらりと数人の美形の男が現れて膝をついた。

楽進「どうですか。全国からいい男を集めました。英雄色を好むと言いますでしょう。毎晩気に入った者を部屋に呼んでくださいませ!」

驚く玲奈と、腕を組み呆れる夏侯惇。

玲奈「困ります!そ、そんな私に後宮なんて作らなくても大丈夫!
あなた達、来てもらって悪いけど帰ってもらえるかな…?」

玲奈の言葉に、困惑しながらも引き返す美形の男達。

楽進「そんなぁ…俺、迷惑なことしてしまいましたか?」
子犬のような瞳で寂しげに俯く楽進。

楽進「曹操様に、喜んでもらいたくて…」

玲奈<うっ…か、かわいい…>
素直な楽進のまっすぐな好意に心が揺れる。

玲奈「気持ちはすごく嬉しいわ、楽進さん。でも、私にそんな気を使わなくて大丈夫。あなたは戦の才能と、素直な性格が取り柄なのだから。
部下達に鍛錬して、より強い部隊にしてね。それが私へのお贈り物になるわ」

玲奈の言葉に、感動して頷く楽進。

楽進「なんと畏れ多いお言葉…! この学文謙、命を燃やして我が軍の指導に務めます!」

深々と礼をして、去っていく楽進。

玲奈<楽進さん、愛嬌があって人懐っこい人だったなぁ。誰からも好かれそう。でも後宮は…さすがに勘弁して>

ホッと胸を撫で下ろす玲奈。


■場面変換(城の中の庭)

玲奈が城の中を歩いていたら、庭に机と椅子が置いてあり、郭嘉が立っている。

玲奈<あれ、郭嘉さん何をしているのかしら>

目が合うと、微笑んで手招きをする郭嘉。

郭嘉「曹操殿、お茶の時間でございますし、少し休憩をいたしませぬか?」

色鮮やかなお菓子が、上品な食器に並べられている。

玲奈「わあ、素敵…!いいのかしら」

郭嘉「もちろんですよ。甘い物がお好きな曹操殿のために、遠方の国から取り寄せました」

玲奈のために椅子を引いて、優しく促す郭嘉。
温かいお茶を淹れ、玲奈が口をつける。

郭嘉「茶葉も、花弁が入っているのでほのかに甘いでしょう」

玲奈「いい香り、とても美味しいわ」

郭嘉「ふふ、喜んでいただけて恐悦至極」

優しく微笑んだ郭嘉だが、胸を抑えると、苦しそうに顔を歪める。

郭嘉「ごほっごほっ……失礼」

玲奈「だ、大丈夫? 郭嘉さん」

口に布を当てて咳をする郭嘉の背中をさする。

玲奈<そういえば、郭嘉さんて凄い才能のある賢い軍師だったけど、若くして亡くなったって…>

史実を思い出して、急に不安になる玲奈。
そんな玲奈の顔を覗き込み、優しく微笑む。

郭嘉「……今日の曹操殿は、たおやかで柔らかい雰囲気ですね。
いつもの気高きあなたも素敵ですが、また違う魅力が見られました」

玲奈「え、そ、そうかな…?」

ゲーム上では一番国で偉い立場なため、皆に命令をし束ねている。
今の玲奈とは似ても似つかない性格なのである。

玲奈「お体の調子が悪いなら、無理しないでね」

郭嘉「ふふ。この奉孝、天命短くとも、曹操殿のお側にいられるのが幸せなのでございます」

体を支えていた玲奈の頬を撫でる。

郭嘉「その翡翠のような美しい瞳に、この奉孝が映っていると思うと、胸が熱くなります」

玲奈の目に微笑んだ郭嘉が映る。

心臓が跳ね上がり、顔が真っ赤になる玲奈。

玲奈<どど、どうしよう…目が反らせないよう…!>

郭嘉「ふふ。紅くなられて、可愛らしい我が君」

そっと髪を撫で、うっとりと玲奈を眺める郭嘉。
薄い唇を寄せ、玲奈はキスされる!と体をこわばらせる。

郭嘉「……今日はここまでにいたしましょう。
怖いお付きの方がこちらを睨んでおりますし。ねえ、夏侯惇殿?」

郭嘉が目線の先、庭の入り口に腕を組んで立っている夏侯惇に話しかける。

二人の視線が交差する。

夏侯惇「……いくらなんでも、主君に馴れ馴れしいぞ、郭嘉」

郭嘉「夏侯惇殿こそ。いつも我が君を独占していて、ずるいですよ」

夏侯惇「主君を守るのが俺の仕事だ」

憮然として夏侯惇が近づいてきて、玲奈の腕を引く。

郭嘉「おお、怖いお方。では、ご機嫌よう」

玲奈「郭嘉さん、お茶もお菓子も美味しかったです!ありがとうございます」

郭嘉「もったいないお言葉。楽しい時間でしたよ、我が君」

椅子に腰掛けたまま、笑顔で優雅に手を振る郭嘉。

玲奈<郭嘉さん、穏やかで気品のある人ね。
体調が気になるけど…素敵なティータイムだったな>

郭嘉へ手を振り返す玲奈に、ため息をつく夏侯惇。

第二話 完

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