Golfboyの開発者、藤田洋介氏にインタビュー!iPhone1台で打球計測を可能にした苦労と今後の展望
iPhone1台で手軽に打球計測ができるiOSアプリ『Golfboy(ゴルフボーイ)』。最近ではGolfboyの技術をベースにした「Golfboy LIVE」がゴルフ中継に採用されるなど、Golfboyというワードに注目が集まっています。
今回は、Golfboyの開発者である藤田洋介さんにインタビューを行い、開発のきっかけや苦労、今後の展開などについて伺いました。
スマホで手軽に、練習をもっと楽しく
――はじめに藤田さんご自身について教えて下さい。これまで、どのようなキャリアを歩まれてきたのでしょうか?
大学を卒業して、初めはシステムエンジニアとして6年間会社勤めをしていました。その後、独立してからは教育関連のアプリやソフトウェアの開発を行っていたんですよ。今の会社(株式会社Qoncept)に入ったのは2017年で、それからは画像解析に関する研究・開発をする傍ら、Golfboyのプロダクトも開発しています。
――もともとゴルフ関連のお仕事はされていなかったのですか?
ゴルフ関連の仕事はGolfboyが初めてです。ゴルフをする人間も社内では私だけで、開発を始めてから社員数名がゴルフを始めてくれました(笑)
――そうだったのですね!Golfboyを開発したきっかけは何だったのでしょうか?
普段のゴルフ練習が楽しくなるアプリや、手軽なツールが見つからなかった、というのが開発のきっかけです。「どこにもないなら作ってみようか」という感じで私と同僚の2人で作り始めました。
私自身、ゴルフがあまり上手ではないので、練習場でミスの原因が分からず悩むことも多々あります。 「悩むだけでなく、楽しいことも増やしたい」とそんな想いもあり、開発を始めました。
――藤田さん自身ゴルフはどれくらいやられるのですか?ゴルフ歴などを教えてください。
大変恥ずかしいのですが、5年間ほどコースに出ておらず...おそらくスコアは110〜120くらいではないでしょうか。1年前にGolfboyの開発を始めてからはひたすら一人で検証のために練習場に通っているので、少しだけ上達しているかもしれません(笑)
ユーザーの声を何よりも大切に
――勝手にプロ並みの腕前なのかと想像していたので、そのスコアは意外でした(笑)開発にあたって、参考にしたコンテンツやアドバイザーなどはいたのですか?
類似のアプリがなく、ゴルフに精通したメンバーもいなかったのでこれといって参考にしたものはないですね。 基本的にはゴルフをよく知らないメンバーが数人集まり、あーだこーだ言いながら作ったアプリになります(笑)
Golfboyで撮影されるクラブパスの画像は、今でこそ評判が良い機能の1つですが、 開発当時はメンバー間で「クラブ画像って見てもよく分からないから外す?」 「まぁ、何か面白いし、残しとくか。」といった会話をしていたようなレベル感です。
ただ、アプリのリリース後は思いの外反響が大きく、ユーザーさんの声を聞きながらアップデートをしていきました。特別なアドバイザーはいませんでしたが、「利用者の声」を一番大切に、というのは、昔も今も、今後も変わらないと思います。
――利用者が良きアドバイザーということですね!アプリのリリース後、ユーザーからはどんな反応がありましたか?
ユーザーさんの反応としては、予想通り、三脚の置き場所について言及される方が多かったです(笑)初期の頃は、正しい設置方法をきちんとアプリ内で伝えることができず、誤った設置方法で利用する方も多く、期待する精度が出ず厳しい評価をいただくこともありました。反省点もあったのですが、それ以上に、”スマホだけで計測できる” ことに今後の期待も込めて、ポジティブな評価が想定以上に多かったのには驚きました。また、ユーザーの皆さんが大変丁寧かつ協力的で、検証にお付き合いいただいた方も多く、効率的に改善を進めることができたので大変助かりました。
「こう使いたい!」という思いを貫き通したプロダクト
――類似アプリはないようですが、Golfboyの1番の魅力を挙げるとしたら何ですか?
「こう使いたい!」というわがままを通して出来上がったプロダクト、というのが一番の魅力ですかね。
というのも、Golfboyは目の前に「三脚」を置いて弾道計測を行います。私は下手なのでよく分かるのですが、ボールを打つときに打球やクラブが三脚に衝突する恐れがあるので、常識的には目の前には何も置きたくない(笑)
それなのになぜ目の前に三脚を置く設定にしたかというと、私自身が楽しみながら練習するには画面が目の前にないとダメだったからなんです。
打ったその場で確認したい!
そのためには、スマホは目の前かつ見やすい高さに置く必要がありました。Golfboyはそれを前提に設計されたプロダクトなんです。
――なるほど。できるだけ快適に使用できるよう、設置に拘った訳ですね。開発にあたり、1番苦労したエピソードがあったら教えてください。
Golfboyの特徴である「スマホを目の前に置く」配置が原因で、打球の飛距離を計算する上で必ず解決しないといけない問題が発生しました。
Golfboyは、床に向けたカメラ映像を解析し「飛距離」を算出します。この「飛距離」を正確に計算するためには、ボールの3次元の移動情報を知る必要があります。
分かりやすく説明すると、例えば、人間の目は両目を使うことで、その視差から奥行きを感じ取ることができます。実は、これはカメラでも同じで、2つのカメラを使うことで奥行きを計算することができるんです。
Golfboyは1つのカメラ映像で解析するため、カメラからみた奥行き(=ボールの床からの高さ)が分かりません。それは、打球の打出角度や速さなどを計算できないことを意味し、結果、飛距離を算出することが困難なんです。
パターのようにボールが浮かび上がらない打球の計算であれば問題ないのですが...
この問題の解決のために、数ヶ月間かけて2次元のボールの軌道を3次元軌道に変換するためのシミュレーションや現場検証を繰り返し行いました。そして、ようやく高精度に3次元軌道に変換可能なプログラムを作ることができたんです。
この問題を解決できなければ、現在のGolfboyはありませんでした。
――1つのカメラでも飛距離の計算を可能にしたなんて、素人には方法が想像できません。すごいですね。現時点で、まだ改善したい部分などはありますか?
Golfboyは全ての機能で日々改善や改良を加えています。1〜2ヶ月前のものと比べても精度が大きく異なります。年内は継続的に精度改善を実施予定で、ショット機能については飛距離、主にラン計算を中心とした精度改善を予定しています。フォーム機能については、お手本となるようなコーチの素材も追加していきます。ラウンド(コースシミュレーション)機能では、ランキング機能を入れ、世界中のユーザーと競えるような仕組みにしたいと考えています。また、現在テレビ中継で利用されている「Golfboy LIVE」のような、リアルタイムでショットやパットの軌跡を付けられるアプリも今後開発していきたいです。
世界で最も利用されるゴルフアプリを目指して
――Golfboyの将来性について伺いたいのですが、今後Golfboyはどうなっていくと思いますか?
国内外問わず、世界中のアマチュアゴルファー(初級者から上級者まで)が、 楽しみながらゴルフのトレーニングに利用いただける、そんな将来像を描いています。
海外のユーザーも多く取り込み、国内外でスコアを競ったり、自作のコースを共有し合ってプレイして楽しんだり。時には、Golfboyを使用してレッスンやアドバイスをしたり。
世界中の練習場やご自宅で、時にはオフィスの中でも、多くの方に愛用してもらえるアプリにしていきたいと思っています。
――最後になりますが、Golfboyにおける今後の展開についてお聞かせください!
Golfboyは、今年は1つ1つの機能を改良し、更なる進化を遂げる予定です。 また、個人利用のみならず、レッスンでの活用や放送まで裾野を広げ、多方面でGolfboyの活躍の場を広げていきたいと考えています。
世界で最も利用されるゴルフアプリを目指して開発していきたいと思いますので、引き続き、温かく見守っていただけると嬉しいです。
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