美しい水のような言葉を浴び続けていたい。
作家、朝井リョウから紡がれる言葉は私にとって「水」だ。
軟水、硬水、炭酸入り、フレーバー付き、と種類は様々あるけれど、私の体中を血のように隅々まで渡り、潤いを与えてくれる必要不可欠なものである。
朝井リョウは私がもっとも好きな作家のひとりで
この度デビュー10周年記念として、今まで行った企業とのタイアップ小説や他の作品とコラボしたものなどをまとめて1冊にして発刊してくれた。
この一冊はまさかもう読めると思っていなかった作品がたくさんなので、出ると知ったとき嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
(ラジオで朝井リョウが「企画でこういう仕事しました~」と話していたのが一冊にまとまるんだもん!!)
今回の私が嬉しかったポイントは作品だけが読めたことではなく、
どういった注文を受けて作ったか⇒作品⇒答え合わせ(朝井リョウの感想など)という流れがあったこと。
「朝井リョウ」自身の言葉が読めるのだ!!
私は朝井リョウの小説と同じくらい彼のエッセイが好き。
まじめな作品を読んだ後に、彼の言葉で解説される『答え合わせ』は朝井リョウ好きにはたまらないだろう。
URLを貼った、今回の特別サイトには小説家としての大先輩である石田衣良との対談もある。
このなかで私がまさに!!よく言ってくれた!(偉そうですが・・・)と思った箇所が下記です。
最近の小説は全体に味つけが濃くなっている。物語の中で死ぬ人の数も多いし、死に方もどんどん残酷になっていて、こってりした味、濃い味のラーメンみたいな世界なんですよ。(石田衣良)
朝井リョウの作品は事件はなかなか起きない。
もちろん登場人物にとっては大事件なのだが、それは生きている世界ではよくあること、と片づけられる程度。
私は朝井リョウの描く普通の日常、
わざわざ私たちが言語化しないような感情表現
でも確かにあの時感じた自分自身ですら忘れてしまうような小さな思い
がとてつもなく好きなのだ。
出来事だけを淡々と描いているような小説もある。
え!?どこで気持ち変わったの?なんていう行動をとって読者が置き去りにされる小説もある。
でも朝井リョウの描く登場人物たちの気持ちは
どこかに私も同じような部分があるかも。。。と思わせてくれる。
だから登場人物たちに感情移入とまではいかなくても、同じような気持ちを味わい、辛い出来事はじわじわと心にゆっくり刃物を刺されたような気分になる。
また、朝井リョウの描く文章表現が単純にとても好き。
課長の表情が揺れる。全然、サイボーグなんかじゃない。私は思う。
私には今、香水をプレゼントしてくれる人はいない。きっと、河西課長にも、いない。
だけど、香水をつけて臨みたくなるような瞬間がある人生が、とても、誇らしい。
ひらがなで表すなら「あやめ」じゃなくて「つくし」みたいに、すべて一筆でさらりと描けてしまうけどよく見るといろんな方向に開いているような、ナツ先輩はそういう人だ。
先生の口から私の名前がこぼれると、さくた、という音がとても美しい響きに聞こえるから、不思議だ。
どうしてこんな美しい表現ができるのだろう、とウットリしてしまう。
こんな表現が私を潤してくれる、
ページをめくって続きが気になるのにいつまでも美しい日本語に浸っていたい。そう思わせてくれるのだ。
言葉で魅せる、そう感じる唯一の作家さん。
以前、読書会で知り合ったお友達とお互いの好きな本について語り合っていたとき、
彼女が私に言った言葉はいまだに心に残っている。
「好きな作家が生きているって羨ましい。だってこれからも新作を読めるんだもんね」
彼女は昔の文豪と呼ばれるような人が好きだった。
(夏目漱石や、川端康成など・・・)
彼女にそう言われるまで、そんなこと気にしたことがなかったが私はとても幸せ者であると気がついた。
朝井リョウは私の3歳上なので、彼が書き続けてくれる限り作品は読めるし、世代が同じなので取り上げる題材はリアルタイムで私も体験してきた(している)ことなのだ。
となんだかごちゃごちゃ書いてしまいましたが
朝井リョウがコンスタントに作品を発表してくれることに本当に感謝しかない。
これからもたくさんの潤いをくれることを楽しみに、
今回の作品もじっくり味わいながら読んでいきたいと思います。
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週1note、4週目です!
他の方のもぜひ読んでみてください!
読んでいただき、ありがとうございました。
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