いつぞやの0214、だから0214。
0214記念日
今朝、ふと、小説のタイトルの「0214」が、2月14日のバレンタインじゃなかったら、この物語を書き続けられなかっただろうなと思いました。
この作品をお読みくださっている皆様、改めて、ありがとうございます。
そう。「BAR0214」はタイトルであり、作中にも登場する店名でもあるのですが、バレンタインが昔から大好きだった私は、タイトルを先に決めて、一気に書きだしたのです。きっかけはそんな自分の「好き」のカケラでした。
先月、はじめて、文学フリマなる世界に飛び込んで出展してきました。
作品に出会っていただき、ありがとうございます。
その中で、俳人のジョージさんに出会った時、こんな風な話をしました。
「最初の作品(1冊)って、一番ピュアだよね」
そうそう!
それこそ、忘れかけていた感覚。今、最も取り戻したいもの。一番大切にしたいことだったのかもしれません。
はじめの一滴
実は、私……原作者でありながら、『BAR0214』を初めて書きおろした時のことを、よく覚えていないのです。
ただ、今、振り返ってみると、その時はひたすらに無我夢中で、我を忘れて、飲まず食わずでも平気で、それほど書くのが楽しくて楽しくてたまらなかった。私にとって、そういうふうに取り憑かれたようにのめり込んだ初めての小説だったということです。
このフィクションファンタジーの究極の設定は、「彷徨う吸血鬼、紅は魅力的な男性の血を吸うが、吸われた人は恋心を喪失すると同時に、心のつかえ(トラウマ等)を忘れ、前向きに生きる」です。
それは、紅が出会いを繰り返す度に楽しく描ける設定であり、そこに登場するBARはとても素敵な舞台でした。言葉を交わし、恋する空間として、BARってすごく魅力的。憧れなんですよね。
そんなところと、自分が好きなイベントの日付を掛け合わせて店名にしたのだと思います。
膨張しだした夢とリアル
わずか28ページ、2000字ほどの現代編。プロット状態だった、吸血鬼と人間との恋の物語は、2016年の冬から、積読ならぬ、積書してきました。自身が企画するイベントのお土産として短編をお配りしてきた作品でした。
【平安編】、【江戸編】を経て、書き続けると、自分の好きな世界も、興味もどんどん広がって、膨張していきます。
演劇の魅力に取り憑かれた、戯曲も書いたことのない私でしたが、この「世界観を舞台化したい!」などと野望を抱いてしまったのでした。【大正編】を戯曲形式で書き上げた時などは、楽しくてしかたない状態でした。
とんでもなく楽しい状態から、「観賞していただくものにする」という意識が入ると、いきなりプレッシャーになったりしました。それでも、それが必要な作業であるとわかっていましたし、なんだかんだ言いながら、支えられていました。きっと、乗り越えていくのが楽しくて、表現することが楽しくて。不器用で、至らぬ私だったのですが……。役者さんやスタッフさんには、かなり無茶をお願いしていたと思います。本当にありがとうございました。
あー!!終わった終わった!!よかったよかった!!
2020年2月14日の舞台が終わると、
そんな風に。
あ、れ ??
満ちに満ちた達成感から約1ヶ月。
落ち着きを取り戻し、違和感を感じ始めます。読み返してみれば「BAR0214」は、まだ終わっていないことに気づきます。
おーーい! これで終わったつもりかい?
最後のページが、どうもそう言っている……
もしかして、作品が作者を育てている??
惚れてしまった原作者のこだわり
その少しあと、1つの作品に出会いました。それから毎日眺めている絵です。
それが、佳矢乃さんの魂の伴侶の絵、しずくふたつシリーズ「053 源泉」です。
毎日毎日眺める度に、もう一人の自分と出会う感覚。
自分の描いてきた世界観と重ね合わせていたのでしょうか、恐縮ですが、この2人を重ね合わせてしまっていたのです。
小説は、文章だけで挿絵の入らないもの。カバーにこの二人がいてくれたなら、きっと素敵……。
通常ならば、小説があってそのイメージをデザインし、カバーが決定されるのが一般的。
うーん、これはいいのだろうか……でも……諦めきれない。
イラストレーター佳矢乃さんの世界観。「魂の伴侶」というシリーズにはきっと想いを込めて描いておられるはず……。
憧れのイラストレーターさんです。ものすごく緊張しましたが、思い切って連絡を入れました。
「もしも、この物語が全国出版にできたら……」
物語を読んでいただいた上で、OKをいただきました。また、ご縁で、カバーデザイナーのかなもりゆうこさんとの出会いがあり、原画データを表紙にしていただけることに。
そこまでが原作者の担当する範囲と意を決して、原作とカバーはセットで物語をと、出版社と交渉することに。
はじめて出版をするというのに、結構なイレギュラーというか、徹底的にこだわりたかった部分でもありました。とにかく、感覚的に勢いで推して推して推しまくった!! 情熱を注ぎ込んでいました。
新たなはじまり
原稿を出版社に勢いのままに送ってしまっていた私は、実は何をどう直していいかわからないまま、突っ走っていました。(かなりのアホです。とにかく、勢いだけで生きていました)
そう、これがまだ去年の今頃。
カバーは原作者指定であることに加えて、さらに、こんなことを言い出したのです。
「来年(2023年)の2月14日までに出版したいです!」
「2月14日には店頭に並んでいる」という状態でありたいというゴールを設定。色々な思いがありましたが、編集アドバイスもあり、一から書き直すことに。
どうしてそこまで2月14日にこだわるんだ、この作者は!!
(私も当時の自分に聞きたい!!)
長く書き続けたための弊害と申しますか、最初に書いていた、【現代編】の章と、出版社入稿直前の最後に書き上げた【昭和編】では、まるで文章の厚みが違っていました。原作者なりに客観的に、俯瞰してみてもわかるのですから、編集担当さんもそれを感じだことでしょう。今思えば、慎重に言葉を選んでメールしてくださったに違いありません。
ともかく、書き下ろした時の楽しい感覚とはまるで違って、出版までは、整合性を持たせるために書き直すという作業に入っていきます。もちろん、勢いだけで書き上げた戯曲形式の【大正編】も、一から。
どっひゃーーーーー!!
私も読者なりに、常々、こう思っていました。
ともかく、最初の5ページが勝負。頁を開いて惹かれるもの。
編集者という伴走者
誰かが見てくれていると思うと、頑張れる。
きっと、人って、シンプルにそういうものだと思います。
編集さんとの出会いもそうでした。原稿をキャッチボールしながら思ったことです。
あ、やっぱり好きな世界なんだ。
私の作品だけではなく、複数の作家さんを同時進行することもあるのだと思うのですが、根本的に「小説」「物語」といったものが好きで、出版社という世界にいる方です。私より遥かにたくさんの作品を観賞してきたであろう人が、今、私の作品に出会ってくださり、「編集」という作業を生業として、情熱だけで突き進んできた私の作品を、より読者に届きやすい状態にしてくださっている。そんな向こう側を想像すると、やはり、前に進みます。
キャラクターや物語に対して、原作者だからこそ気付けない部分にメスを入れ、時代考証なども徹底して赤が入りました。
その上で、
「クリエイティブな部分は、編集者は触れない」と、当初からのお約束が。原作者と編集者は、確かな境界を持っていました。
もう一度、原作者が物語を好きになれた
自分が描いた物語が、手を離れて、何度もキャッチボールしていくうちに、どこか理性的に客観的に、冷静になります。「これは本当に私が描いたのだろうか?」というほど。
失っていくのはそう、紛れもなく「最初の一滴」。楽しくて楽しくてというあの頃の感覚です。
それをもう一度思い出して、原作者が自分の作品に向き合い、自分の作品をより好きにさせてくれるのが編集さんなのだと思います。尊敬しています。
完成後、全国の書店で発売になり、そして、いつも見ているAmazonの画面に自分の作品が表示されています。今でも不思議な感覚です。
今日は、「BAR0214」記念日。
いつもの調子だと、自分で何かしらのイベントを企画していたかもしれません。けれど、今年は違いました。
今、心静かに、やっと一人の読者になれる日が来たようです。
ありがとうございます。
2023年2月14日
ハッピーバレンタイン
出会いと軌跡に感謝を込めて
香月にいな
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