【シーソーシークワサー 34 スパイシーナイト 】
↑前回までのシーソーシークワーサー は……
【シーソーシークワサー 34 スパイシーナイト 】
朝が来る前が一番暗い。加えて寒い。
テキトーに作るねと出してくれた夕飯の味噌汁は、しょうがが良く効いていた。今まで触れてこなかった絢の世界。有り合わせのストックで手際良く冷蔵庫から出して夕ご飯を作った絢の日常に、いきなり入ってしまっても彼女はまるで動じなかった。
真夜中に僕の腕を擦り抜けてベッドを出ていく彼女は、優しかった。それでいてひとりの時間を持ちたいとする意思を感じる。物音を立てない様にひっそりと移動する空気の中で、寝たふりを続けた。ひと一人が離れると、温もりが違う。布団の中なら尚更、それを知ることになる。
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