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どうやって顧客に届けるか

今回はどうやってサービスを売るかという話をしてみたいと思います。Webサービスなんかプレスリリース出してGoogleに気に入られそうなホームページ作ってネット広告ばんばん打てば楽勝だろうと思われるかもしれません。ちょっとマーケティングの本を読んでかじったことのある人なら、グロースハックといってなんか書かれているとおりにやれば自動的に売れていくような魔法のやり方があると信じている人もいるでしょう。かつてわたしも信じていました。でも実際にやってみると、そんな甘いものではないことがわかります。半年間にA/Bテストやオートメーションメールについてドヤ顔で語っていた知人がサービスを閉じて転職先を探しているような例は、これまで何度も目にしてきました。

わたしはマーケティングの実務経験がほとんどありませんでしたので、とにかくできそうなことは片っ端からやってみました。イベントを開催したり、広告を打ったり、協業先を探したり、動画を作ったり、メルマガを発行したり、SNSやSEOをがんばってみたり、展示会に出展したりとまあいろいろやりました。ビジネスコンテストに出場して入賞したこともあります。これらの中にはまあまあ効果があったかなという施策もあれば、お金も労力もかけたのにまったく顧客獲得につながらなかった施策もあります。ぶっちゃけ、後者のほうがだんぜん多いです。

マーケティングつらい問題

結局マーケティングって、わたしみたいに開発メインでやってた人間からみるとやっぱり、「なんかつらい」になってしまうんじゃないかと思うんですよね。

  • 失敗に終わった施策の徒労感がすごい

  • なんか自分が嘘をついているのではないかという気がする

  • 施策の効果測定が難しく、評価しにくい

最初のは製品開発だったら、新しい機能を作ったとして、すぐに使ってくれる人いなかったとしても、便利になったのは間違いないのだからあまり損をした気分にはなりません。そのうち使ってもらえるだろうと思えるからです。ところがマーケティングは通常どんな施策も、終わってしまえばなにも残りません。1年前に見たネット広告を思い出す人はいません。何日もかけて資料を作って準備したイベントに誰も来てくれないこともあります。がんばってあちこち顔を出して営業しても見向きもされないときは、自分が悪いことしているのではないかという気さえしてきます。ブログの記事がたまたまバズったとしても、それが売上につながることは決して多くありません。

こんなふうにマーケティングがつらいとなると、やっぱりやり方が間違っているのだろいうということはわかります。特にいろんな施策を片っ端から試しているときにそうなりがちなのですが、施策そのものを実行することが目的になってしまい、実現したいことと内容が合っていなかったり、クオリティの低い施策を打ってしまうことがあります。もちろん経験してみてわかることはあるので、いろいろ試してみるのは悪いことではありませんが、本に書かれてあることをすべて実行しても、得られるものはびっくりするくらい少ないことがわかります。それは本が悪いわけではなくて、提供するサービスの種類や規模も違えば顧客が求めているものもそれぞれ違う、トレンドも変わる、そんな状況で普遍的にどんなものでも売れる方法などあるはずがないという、当たり前のことを認識するのが第一歩でした。

集客 ≠ マーケティング

たとえば「ホームページ」というワードで集客できる人たちがこれくらいいるとします。

一方、うちのサービスで価値を提供できるのは、せいぜいこんなところです。

大きな円の顧客の多くが必要としているのは、何十ページもあるような企業向けのホームページであり、一度制作会社に作ってもらったら10年くらいは何も手をかけないで済むような、見栄えのしっかりしたサイトでしょう。そして彼らの多くは、ホームページを自分で作ろうとは思いません。わたしたちが得意としているのは、農家さんが自分で情報を発信していけるいちご狩りの予約サイトだったり、書道の魅力を発信する教室のサイトだったり、地域に特化したイベントのサイトだったり、企業のマイクロサイトだったりします。ど直球のやり方で集客したところで、アプローチできるのは大きい円の真ん中にいる顧客だけです。彼らにいくらサービスの魅力を伝えたところで、がっかりさせてしまうだけです。集客することがマーケティングではないのです。

じゃあまず円を合わせればいいんじゃないかと思われるかもしれません。がそれはそれで問題があります。ど真ん中のところには競合も多いので、そこで商売しても大手には敵いません。小さいお店をやるなら何かしら尖ったりはみ出たりしていないと、生き残っていくのは難しいのではないかと思います。

なので、最初の顧客はなんとかして自分で見つけないといけません。うちの場合は、最初のころ闇雲にやっていた施策が、非常に少ないながらも結果的に受注につながり、そういった方々から本当に少しずつ、少しずつ、我々のサービスを必要としている人へのつながりを与えていただいた感じです。うちはイベントやコミュニティ主体の利用者が多いものですから、コロナになってある時期は新規契約よりも解約数のほうが多くなってしまったこともありましたが、なんとか売上を減らさずここまで乗り切ることができました。利用し続けてくださっているお客様には、本当にいくら感謝してもしきれません。

行動を変えないマーケティングは害悪

今はコロナの影響もあって、続けているのはこのブログと会社のオウンドメディア、それからTwitterくらいです。メルマガは5年くらい続けていましたが、プッシュ型のメディアというのはこの情報過多の時代に気持ちが良いものではないなと思ったので、これを機にいったんやめることにしました。落ち着いてみんなが安心して外出できるようになれば、めっちゃ面白いイベントでも開催してみなさんとリアルにお会いしたいなと思っています。

最後に、最近改めてマーケティングとは人の行動を変えるための活動だなと思えるようになりました。広告でもSNSでもなんでもそうですが、人様の時間を奪っておきながら、心にすんとも引っかからない施策ならそれはただのスパムであり、害悪です。それだけは忘れないように、今後も活動していく所存です。