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いわた書店一万円選書 読書感想文①『パリのすてきなおじさん』

いわた書店の一万円選書に当選し、送ってくださった本を眺めていて、最初に「あ!これから読みたい!」と思わず手に取った一冊が、この「パリのすてきなおじさん」です。

いわた書店の「一万円選書」当選についての記事はこちらをどうぞ▼


「パリのすてきなおじさん」とは?

ポップで可愛いイラストに、魅力的なタイトル。
きっと、パリのステキなイケおじから、ファッションや考え方、暮らしのセンスなどを教えてもらえるのかな〜、なんて思いながら、気軽な気持ちで読み始めました。

そして結論から言うと、それは半分合っていて、半分は違っていました。

思っていたよりも何倍も。
人生、生き方の、もっと深い部分を、この本に出てくるおじさん達から(そう、この本は、一人のおじさんにフォーカスしてるわけじゃなく、いろんなおじさん達が登場するのです)、学ぶことができます。

おじさん達から学べる生き方とは?

この本は、
「お!このおじさんの話はきっと面白そう!」という“選おじさん眼(by金井さん)を持つ、作家でありイラストレーターの金井真紀さんと。
「僕の商売道具は好奇心」と語る、パリ40年在住のジャーナリスト広岡裕児さん。
お二人の「パリのおじさんを集めよう!」という、ひらめきから実現化したもので。

このお二人のコラボが本当にビンゴだと感じました。

一人一人のおじさんが持つ個性的な魅力や、彼らの言葉や考え方から感じられる哲学や価値観には、思わず「う〜む」と膝を打ってしまいます。

「ボンジュール!ちょっとお茶でも」なんて、ナンパのような声かけでこれらのおじさん達を集めたお二人の嗅覚や、インタビューの際の、金井さんのおじさん達に向き合う距離感が、なんとも絶妙で。
おじさん達に気分良く話してもらい、読後感ならぬ、良い話後感を残すために、ぐいぐい質問されたり、逆に踏み込むのをセーブしたり。この塩梅がうまいなぁ、と。
だから、おじさん達が無理なく、自然に、ご自身の内にあるものを、ポロリ、ポロリと吐き出してくれたのだろうな、と思いました。

魅力的なおじさん達の言葉や考え方を紹介

それではここで、いくつかのおじさんたちの言葉や考え方を紹介したいと思います。

二分考えれば済むことを、みんな大げさに考え過ぎだよ。
人生には予想外のことが起きる。そして限りがある。だからこそ、本質的なことだけに目を向けるべきだ。

「おしゃれなおじさん」の章:10着しか服を持たない男 セバスチャンさん

スペイン生まれなのに、なんでフランスにいるの?って聞かれることがあるんだけど、ぼくは地球生まれだからって答えるんだよ。みんな同じ球(たま)のなかに住んでいるんだからねぇ。隣人を尊重しなければいけないよねぇ。

「アートなおじさん」の章:旅するギター作家 リベルトさん

人生を学んでいるあいだに手遅れになる。だから大事なことを後回しにしてはいけない。人生とはそういうものなんだと思います。

「アートなおじさん」の章:モンマルトルの老画家 アンリさん

内面の平和がいちばん力を持つんじゃないでしょうか。理想の国とはなんだろうと考えると。
軍事力とか、経済力とか、そういうことは重要ではなく、そこに住む人が内面的に満たされていることがいちばん強い。そういう世界が理想だと思います。

「はたらくおじさん」の章:中国出身の出版人 朱さん

人は変わることができる。
変わらなければいけない。

「今を生きるおじさん」の章:75年前「隠れた子ども」だった人 ロベールさん

「パリのおじさん」と人生の対話を楽しむ一冊

これらのおじさんたちの言葉は、彼らの個性的でユニークなだけでなく、壮絶で複雑な背景をも反映しています。
クスッと笑えたり、胸が締め付けられるようなさまざまな生き様は、楽しく読み進められるだけでなく、考えさせられるものでもあります。

「パリのおじさん」とは単にパリにいるおじさんのことを指すのではなく、戦争、移民、宗教。様々に入り組む問題。
それらを背景、ルーツに持った、味わい深い人間の物語です。

後書きにある広岡さんの言葉、
「この旅は、人間という存在、生きるということの破片を集める旅だった。」
はまさにこの本のテーマです。

これからも、生きることや人生について、ふと立ち止まり、考えてみたいと思った時に、この本を読み返して、登場するおじさんたちとの対話を楽しみたいと思いました。


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