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推しの恋人発覚で「裏切られた」という心理について考える

表題の通りです。
私は人生で一度も三次元の異性の芸能人に入れ込んだことはなくその界隈に近づいたこともなく入れ上げている近しい友人もいたことがないため、いわゆるガチ恋勢に対しての感情は、不思議な国の奇妙な習慣といった風情です。

最近Vtuberを見たり聞いたりするようになり、その雰囲気にも触れるようになり、ガチ恋勢の言動をちらほら見るようになりました。
「本気で付き合えるとはまさか本当には思っていないだろうに、恋人の有無をそこまで気にする理由ってなんだろう」と思っていたところ、ちょっととっかかりになりそうな考え方を見かけたので自分用に整頓しておきます。

アイドルとは人気商売、人気商売の供給とは「応援させてあげる」ということ

twitterで見た、某大量(40人以上いるやつ)グループ系アイドルの、「恋愛禁止をみんなに守らせる」「グループをでかくする、大きいイベントを成功させる」を掲げていた女性の熱愛発覚に関してのファンのお気持ち。意訳要約ですがこんなかんじ。

「付き合いたいと思っていたわけじゃない、応援していた。彼女が青春の全部をかけてアイドル活動をしていると思っていた。その姿を応援していた。でもそうじゃなかった」

これだけ見ると「いやワンチャンあると思ってたんでは?」「負け惜しみで恋愛対象だったわけではないと言ってるのでは?」って思っちゃいますよね、それもまったく完全にゼロだったとは言いませんけど……

で、ある元ジャニーズファンのブログにあった文章を見たとき、とっかかりを得た気持ちになりました。こっちも要約。

「私は推しの夢、「全国ツアー」を叶えてあげたい。だからそのための応援をしていく。でも推しの恋愛には一切関与できない、推しがプライベートで幸せになってほしいとは思う、でもそのための手助けは何も、何もしてあげられない」

つまりですね、アイドルって人気商売じゃないですか。人気商売ってのは集約すると「この人の力になりたい」「この人を応援したい」なんですよね。マジのガチで配偶者ポジションを狙うのは全然違う話なので本稿では割愛します。いわゆる「ファン」がなぜアイドルの恋人の有無で沸騰してしまうのかという話を考えています。

で、アイドルって、人間の「応援欲、支援欲、保護欲」に適したものを供給してくれる存在なんだなーと思うんですよね。
当人たちの間には個人としての相互の関係は存在しないけど、ファンから推しへの関係は「応援」という形で存在できる。関係性を持てる。お金なりなんなりを使って「ファン」を自称すれば、彼ら彼女らの関係者になれる。
応援しやすいアイドル、というのは人気が出やすいなーと思います。容姿と能力が優れているアイドルより、応援のしやすさ、それが「アイドル」には重要。出来杉くんよりのび太くん。(容姿と能力が優れているならアーティストルートもある)

そして自分(ファン)の応援、関与、支援により、推しが幸せになったのだと思いたいんですよね。そして推しの功績の一部に自分も関わっているのだと信じる。
推しのCD売り上げ、武道館公演、映画主演、人気投票TOP、写真集、テレビ出演……この誇らしい功績は自分が応援していたから達成できたこと……応援してきてよかった、これからも応援しよう……

ただ、ファンが関与できないしその過程にすら関われない「推しの幸せ」があるんです。恋愛と結婚です。

マラソン大会の裏切りと本質は近い

つまり「推しのことと推しの夢、推しの幸せのこと全部知ってたはずなのに、知ってることよりも全然でっかい総量の夢と幸せを自分(ファン)に隠してた」っていう、そういう「裏切り」なんじゃないですかね? 恋愛と結婚って。
マラソン大会で「一緒に走ろうね」と言ってたのにダッシュされるやつ、勉強してないわーと言ってたのに高得点取られるやつ、発達障害のつらいことあるある漫画に共感してたら終盤で「理解のある彼くん」が出てくる、そういう。

推しの恋愛ではないですが、最近、匿名ダイアリーで「モテない」って言い合ってた女友達グループの一人から結婚報告された、という際の感情の動き(怨念とも言える)を読んだんですけど、あれもたぶん推しの恋愛結婚報告に近い「裏切られた」感覚なんですよね。そして女友達同士なのでもちろん(たぶん)恋愛感情持ってたわけではなく、そちらに発展したかったわけでもなく。でもこれ、たぶん異性の推しの熱愛報道と感情が近いんですよ。つまりやっぱり付き合いたかったからショックを受けてるわけではない。

推しの夢と幸せの目標を全部把握してた自分に「すでに成立したもの」として投げ込まれた推しの恋愛。そんなの「本当の幸せなわけがない」と否定するor「ファンに見せていた姿は何もかも嘘」とするしか、心を守る手段、ないだろうなーーと思います。心を傾けていた度合いが、「自分は推しのことを理解してる」という気持ちが強ければ強いほど。
推しの幸せと自分には何の関連もなかったと見せつけられたような気持ちになるんでしょう。あ、もう自分の応援はいらないんだな、と。

異性の影にめちゃくちゃ敏感なVtuberの箱の感想もたまに見るんですが(配信自体は見ない)、ここのファン、同性の配信者どうしが仲良くなるのすら見えないところで進行「してた」のを嫌がるんですね。初コラボからだんだん距離をつめていくところまでチラ見せででもファンに見せておかないとなんか納得されないっぽい。

この「同性内の関係性も見せていく」ってやつ、韓国アイドルはすごいらしいですね。Instagramでメンバー内の交流をきっちり見せていって、知らず知らず箱推しにならざるをえない囲い込みがうまいとか。

となると「同担拒否」ってのも「推しと自分の関係性」の構築にノイズだからってことかな…… 本当に付き合いたいから聞きたくないとか嫉妬とかではなくて、他人の二次創作の詳細なんて知りたくもない的な……?(すぐ同人に例える)

なら片思いから成就までの過程もショーにすれば応援コンテンツとして飲み込まれるのか?

過程を見せずにぶつけるから「恋愛」が嫌がられるのだとするなら、その過程もファン用にラッピングして随時見せていけば「応援」の対象になるんでしょうか?

なるだろうなあ、なるのかもなあ。と思ってます。私の狭い観測範囲ですけど。「モテない」「恋人がいない」「婚活してる」ネタはよく見るし(相手がいない、という主張なのだとしても)。実際、その過程をテレビやyoutubeの企画や雑談ネタにしている芸能人、Youtuber、Vtuberもそれなりに見ます。
募集中ステータスから相手ができましたステータスへの変更、かつその努力や過程を見せていくのであれば「実はいました」よりも反発は少なくて、それどころか「おめでとう」すら得られる……ような気がする。ガチ恋になったこともないしなった友人すらいないので、推測ですが。もしかするとそっと離れるファンはそれなりにいるだろうけど炎上にはならないだろうし、むしろ相手がいる人を推したいファンがかわりに入ってくれる気もする。

某声優どうしが付き合ってるのはファンの間では暗黙の了解で結婚時には祝福されたし、なにより「推しどうしの恋愛を応援したい」というコンテンツこそが恋愛ドラマ、小説、二次創作なので。恋愛の応援はコンテンツになる。バチュラーとか。推し活というより楽しみ方は競馬に近いけど。

実際問題、片思いの段階からファンに開示すると成立するものもしなくなるだろうから、まあ、難しいでしょうけど。まあ成立後にエピソードを演出して見せていくならできるかもしれない……

以上がガチ恋につまさきすら触れたことのない人の現時点での覚書です。


追記:この記事公開したらレコメンドされてきた↓これがすごくよかった、やっぱり「ビジネスの顔」って理解できてれば大丈夫なんだ……



続きかいた。


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