“一線を越える”という現象に、「一線を越える」という言葉以外で近づく

公園デビューしたときから作っていた
砂の城は、具現化された死が
生命を奪おうと伸ばした手みたいな白波に触れられて
溶け崩れた 改札脇のキスを見られてキレる恋人たちの
残酷さと同じ白さの砂が、濁ったエスプレッソに変わる
黒が、白砂の中の、暗闇に消えていく
金星まで5500万km
 
月が落ちて太平洋プレートを砕く音も、
窓まで凍える夜には消されてしまう
朝になったら、拡散される迷惑行為みたいな
純粋な光が、廃墟の折れた石柱の断面の粉塵まで、
透徹した世界に浮かび上がらせる
金星まで5000万km
 
一線を越えて、ひきこもりになったのだろう
金星まで4200万km
 
ダブルクォーテーションに、カギカッコは合っている気がしないのに、
カギカッコとしか言えない状態になって、カギカッコを体感している
囚人は今日も言葉を削り出す



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