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【詩】完璧な水

夕陽と雲で、空が火山みたいになった日、きみは溶けて、溶けて溶けて溶けて、誰にも知られていない森の湖になる。みんな探す必要がないから知られていないのだけれど、ぼくみたいな、(ぼく以外にいるかは知らないが)自分の誕生日の月を嫌っている人間は、きみでしか喉の渇きを完全に癒すことができなくて、バイト終わり、すこし遠回りしてきみを探すんだ。
めんつゆに入れた瞬間に、氷にヒビが入る音で、なにかから解放された気がする。煮凝った夜は、最低限の柔軟性で極彩色な幻を見せて、ある人にネオンライトの枝垂れ柳を纏わりつかせて、ある人を保護森林の路地裏で独り善がりなかくれんぼをさせて、フィクションみたいな楽しみかたをしている。笑うとプルプルふるえる腹が、夜の窓を叩く風になる。
セピア色って結局なにいろ?ってあなたが聞いたから、ぼくは眼の仕事についたのに、いろって、脳のはなしだってことが分かっただけだった。あなたの、笑ってしわしわになった顔は、うろこ雲みたいだった。笑うたびに、しわしわになる顔は、金波きんぱ銀波ぎんぱのようだった。体育館脇の水道が一番きみめいているのかもしれない。バケツに汲んで、青くなった水。

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