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KADOLABO 002 Marginal Ⅱ


諸言


現在のクラフトビールシーンでは、Polyfunctional Thiol という香り化合物が注目されています。Polyfunctional Thiol は非常に香り閾値の低い成分であり、微量でも香りを感じること ができます。特に 3MH、3MHA、4MMP といったフルーティなタイプの Polyfunctional Thiol は、ビールのフルーティさを強化するために使用されます。Hazy IPA などのビールで、 Polyfunctional Thiol の活用が注目されています。
最近、White Lab 社から Polyfunctional Thiol を代謝する Tropical Blend という酵母ブレン ドがリリースされました。これまで入手可能だった Polyfunctional Thiol を代謝する酵母株 の多くは、他の生物由来の遺伝子を導入したものでした。日本では遺伝子組み換え酵母の使 用が制限されていました。しかし、このブレンド酵母は Non-GMO であり、Tropical Blend のリリースは日本の醸造所にとって朗報となりました。
今回は、Tropical Blend を使用して、ビールと赤ワインのハイブリッドを試みました。

方法


まず、Tropical Blend を使用してアンバーエールを発酵させました。ホップの使用量は控えめでしたが、⻨汁からはモルトとホップ由来の Polyfunctional Thiol の特徴的な香りが感 じられました。
次に、赤ブドウ果汁を加え、Vin13 というワイン酵母で再発酵させました。Vin13 は Polyfunctional Thiol の代謝能力を持つ株で、マルトースまで分解する能力があります。
赤ブドウ果汁の代謝が終わった後、自然なホップのニュアンスを持つホップエキス Spectrum を加え、ビールをパッケージングしました。植物由来の成分は抑えられており、 フルーティな特徴とよくマッチしました。
最後に、ウッドチップをビールに加え、オーク樽で熟成させたようなバニラやウッドのニ ュアンスを引き出しました。タンニンが感じられる深みのある仕上がりになりました。

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