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講演レポート:Takram田川欣也さんセミナー@Globis(前編)

<前編:Takram田川欣也さんセミナー@Globis>
「イノベーション・スキルセット - 世界が求めるBTC型人材とその手引き-」

本当に素晴らしいセミナーでした。
ビジネス(B)、テクノロジー(T)、クリエイティブ(C)の3つを兼ね備えることが大切であるという話。

さらに、デザイン、デザイン思考などをわかりやすく説明してくれています。ビジネスパーソンもクリエイターも必読です。

今日は前半。続きはまた後日。

*書籍「イノベーション・スキルセット - 世界が求めるBTC型人材とその手引き-」も必読ですね!

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<セミナー文字起こし>

□ そもそも、なぜデザインがビジネス界で注目されるようになったのか?デザイン思考はいつ頃から始まったのか?

1850年くらいまでは1人で職人のように作る時代だったが、第一次産業革命起きて、機械化が始まり、デザインが生まれた。

□ デザインって何? 何のため?
第一次産業革命で物が大量に作れるようになったが1850年当時は劣悪な大量生産のプロダクトが世に溢れていて、使い勝手の悪い、品質の悪いものが多くあった。

そこで、人間が生活空間で使うものに対する改善ニーズ、デザインに対するニーズが高まった。

つまり「人工物が生活空間に入っていく、定着していく、そのために必要なのがデザイン」

例えば、イスからデザインを抜くと、むちゃくちゃ座りにくいものになる。シューズも同じで、履きにくい、歩きにくいものになる。そう考えるとわかりやすい。

□ 産業革命ごとにデザインの手法が更新されている

第2次産業革命=電力革命
ハードウェアとエレクトロニクスの融合
Sony、Panasonic、Toyota、Canon 日本の主力産業はここに固まっている
1次と2次の産業革命では、デザインの概念はあまり変わってない
大きな変化は第3次産業革命=コンピューターの時代の始まりとともに訪れた。パーソナルコンピューターが普及して、ソフトウェアが入ってくると、「人工物」の概念が大幅に変わった。それまでは単機能なプロダクトが多く、例えばイスで音楽が聴けるというようなものはなかった。
単機能だとシンプルだけど、スマートフォンみたいにインタラクティブになっていくことが前提としてプロダクトが作られるようになり、コンピューターと人間をうまく繋げるUXデザインが必要になった。

デザイン思考という言葉は第3次産業革命時代にできた。
コンピューターサイエンティストたちがエンジニアリングでソフトを作る場合、そのままだと人に使ってもらえなくて、仮説を作ってプロトタイプを作って、ユーザーの振る舞いを見て、ぐるぐる回していくというデザインエンジニアリングが確立されていった。これを汎用化してあらゆるものに使えるようにしたのがデザイン思考。だからソフトウェアの設計手法に非常に近い。

だから、単機能ハードウェアである、椅子や空間を作るときにはあまり効果が出ない。逆にインタラクションが発生するものには効果的。

2015年くらいからハードウェア、エレクトロニクス、ソフトウェア、ネットワーク、サービスが全て入ってくるスマホの時代に。

ユーザーインタフェースのデザインやデザイン思考を使ったほうが、よりビジネスがうまくいくものが増えてきた。ここでデザインが重要になってきたと言われている
乱暴な言い方をすると第2次産業革命まではデザインはNice to have、第3次産業革命以降はMust Haveになった。
日本ではようやくデザインの重要性が理解されるようになってきた、アメリカから遅れているのは、日本の主産業がまだ第2次産業であるから。

デジタル要素が入ってくる時代になればなるほどデザインは避けて通れない。

ビジネスやテクノロジーの人もデザインを勉強しなければならない。

では、どうやって新しいチームを作って変革を起こしていくのか?
□ BTC人材
ビジネス、テクノロジー、クリエイティブ、3つの能力をコンパクトに集約したチームや個人が、新しいものを生み出していく。

ビジネスとテクノロジーをわかってる人は日本にもたくさんいる。でも、今は顧客体験の比重が高くなっている。

そこでクリエイティブをビジネスやテクノロジーにどう融合させるか?

顧客体験を無視して、アプリサービスを成功させるのは不可能に近い。

だから、デザインに向き合う必要が出てきた

□ 3種類のデザイン

B,T,Cの専門家と橋渡しの人材、Business Design(ビジネスとクリエイティブをつなぐ)、Design Engineering(テクノロジーとデザインをつなぐ)、Classical Design(従来型のデザイナー)の3つ。

□ PELOTONの事例
エアロバイク+オンライントレーナーのサブスク。
市場平均価格の5-6倍の価格設定
オンラインサービスは月額40ドル(年間5万円くらい)
初年度で25万円を支払う設計
2年目、3年目サブスクは続く
ユーザーをストックしていくと利益が積み上がる設計に
売り上げ970億円
時価総額5000億円(上場前 Series C時点)
ビジネスモデルはSaaS Plus A Box
NPSランキングでアップルに次ぐ2位に!
これをどうサステナブルなビジネスにするのか?

シェアリングエコノミーの話で、シェアバイクの事例がよくでてくるけど、PELOTONはハードウェアの生産費をユーザーに負担してもらうという点が優れている。
シェアバイクはそうではないので、初期投資の段階で苦しくなる。

でも、PELOTONはこのサービスを20万で売り切る力がすごい、ここにデザインの力が効いている。

エアロバイク本体、タブレットのオンラインのUI/UX、
オンラインでしか買えないプロダクトだったのが、直営店舗も出すようになった(ショールーミングのみ = 商品を販売していない)

店舗のインテリアデザイン、ウェアもオリジナルデザイン(クロスセル商品)ちゃんと一つのデザイン哲学で貫かれている。

各コンポーネント(各部署)には違うバックグラウンドの人たちがいる。そうすると分業的になって、いい製品にならないのが普通。でも顧客中心に考えて、ユーザーがどう体験をしてお金を払うのかを徹底的に追求する。
ユーザーは1人しかいない、マーケットはバーチャルなもので、いるのはユーザー。
ユーザーを徹底的に追いかけて行って、シンプルに体験できるジャーニーをデザイナーが頑張って作っている。

Design Engineering、Classical, Business Designerが結託していて、このように分業しているものを、一つに束ねるのがデザインの効果。

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□ デザイン経営宣言
デザインを2つに整理している(効果にフォーカス)
1)イノベーションに関するデザイン
2)ブランド構築に資するデザイン

デザイン経営の効果=ブランド力向上+イノベーション向上=企業競争力の向上

□ なぜイノベーションに役割を果たすのか?
(第1次産業革命の頃から)もともとうまく行ってないものをうまく行かせるのが、デザインの機能であるから、ビジネスやテクノロジーのロジックで生まれたもの + 合理と不合理をフィットさせるようなデザインの力が効く

□ ブランド構築に資するデザイン
ブランドとは競争関係の中で、競合と比べたときに技術力や人材力などが一緒だったとしたら、ブランド力が高い会社の方が優位になる(採用も、販売力もプライシングも)

□ 無印やユニクロはデザイン経営と言われるが
ユニクロはイノベーションもあるけれど、どちらかというとブランディング志向。(無印も)ダイソンはイノベーションにデザインを使っている。PELOTONは両方うまい。それぞれに比重が違う。それによって、どんなタイプのデザイナーが必要かも変わってくる。

□ 提言
1) 経営チームにデザイン責任者がいること
2)事業戦略構築の最上流からデザインが関与すること
最初の段階から、デザインの方法論を入れていく
□ デザイン導入の経済効果
デザインをうまく使ってる会社は10年間で株価が2.1倍の成長開きがあった(US)
ヨーロッパでも2.0倍の成長
4倍の利益はイギリスの政府の調査、デザインへの投資効果
デザイン経営の成功事例
Apple
dyson
airbnb

デザインを経営に取り入れるべき

□ どんなビジネスが、経営にデザインを取り込むべきか?
・デジタル要素の有無
・エンドユーザープロダクトの有無
*BtoB / BtoC関係なし
これで4象限のマトリクスを描く

1) エンドユーザーがいて、デジタル要素があると MUST HAVE。だから、デジタル系のスタートアップは、こういう話については理解がある。デザインの使いこなし方、利益を出すためのプロセスとして活用している。
しかし、日本企業はまだ第2次産業的メカトロニクス、デジタル要素なしプロダクトが多い。
2) エンドユーザーあり、デジタル要素なし → Nice To Have
自動運転みたいなものはデジタルが入ってくるから、
人間とマシンの関係があるからデザインが必要

3) エンドユーザープロダクト、デジタル要素なしは NO NEED TO HAVE
投資の優先順位のトップランクには入ってこない
第4次産業革命では、2が1に移っていく
メカトロニクスにデジタル要素が入っていく時代
この進歩に合わせていくためにはデザインを導入していく必要がある

□ 経営サイドで何が必要か?
デザイン責任者が必要で、その人たちは誰と仕事をするのか?
CPO CTO (Product / Technology)サービスやプロダクトをトップで握っている人とやる。メルカリのCDOもCPOをカウンターパートとしてやっている。(イノベーションのデザイン)
もう一つはCMOとインターナルブランディング、広告PR XI (ブランドに資するデザイン)どういうコミュニケーション設計をしていくのか?を担当する人 = CXO (Chief Experience Office)が、CPOとCMOの間に入って分業的なところをつなぐ

プロダクトを作る人と、コミュニケーションを作るところが乖離しているので、そこをつなぐ作業をやる、そしてシナジーを生み出していく。デジタル世代の経営者は、これを理解している。ラクスルはCMOとCPOの両方の目線からデザインを見ている。

□ BTC組織・人材はどう作れるのか?
最初から3つできる人はいない。
ポイントは3つしかない「観察、試作、センス」
ビジネス系の人は 「観察・プロトタイプ」「センスを磨く」とよい。ビジネスはビジネスでやりながら、デザイナーたちがやってる仕事の要素(観察、施策、センス)を取り入れていく。
テクノロジーの人も同じで少しクリエイティブな要素をつけて、実務で使いながらそこを育てていく。3つを抑えるには時間がかかる、まずはリテラシーレベルでいいし、デザインを自分でやらなくてもいい。デザイナーしかできないこともある(専門教育が必要)。でも、何を行ってるのか?何ができるのかは把握しておく必要がある。共通言語を作っていく、会話ができるようになることが大切。

□ デザインを「課題解決のためのデザイン」と「スタイルやブランドを作るデザイン」の二つに分けて考える
デザイン思考をいくらやっても、スタイルとブランドの話は出てこない。美しい造形を生み出す方法は出てこない。

デザイナーがデザイン思考を「?」と思うのは、この方法論もやる人も違うから。でも両方やらなきゃいけない。g逆に非デザイナーが「課題のためのデザイン」を学ぶことは可能。

基本は「観察」と「試作」の繰り返し
n=1を執念深く追いかけていく
□ n=1の観察テクニック
1)現場、現物、原人を徹底的に観察する
これをやらずに新製品を考えるのは、ほぼ成功する確率がない
成功している人はこれを実直に考えている人が多い
2)課題を書き出す
3)同時に解決策を書き出す
プロトタイピングテクニック
スケッチ、ダーティプロトタイプ、テクニカルプロトタイプなど、いろんな手法があるから、本を買ってみると良い。量で考える部分と質で考える部分を組み合わせる
□ 付箋トレーニング(センスの養い方)
センスの話はみんな避けがち。でも人間が美しいものに惹かれるのは、生理学的なもの。
美味しそうとか、視覚に惹かれることはある。
りんごを手にとって、買うか買わないか決める
何を見てるか?視覚情報などでいいか悪いか判断している
プロダクトやサービスでもこれは起きる
選んでもらうようにチューニングする

□ センスとは何か?言語化して見ると、、

センスはジャッジの積み重ね
良いものと悪いものを分ける能力
□ ジャッジの眼力を鍛えよう
写真がたくさんある雑誌などを一冊買って、
・自分が良いと思うものに青
・ダメと思うものに赤
・よくわからないものに黄
の付箋を貼りましょう
数を数えると、センスがない人は黄色が多い
(=ジャッジ能力がない)
センスのいい人には、良いか悪いかしかない
好みの可視化、理由を分析していけば、鍛えられていく
どれに青を貼ったから良いというわけではない
プロになればなるほど違う、でも黄色はなくなる
自分の中の厳密な基準がある

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