見出し画像

講演レポート:IDEO Tim Brown

<デザインと創造力で考えるビジネスと社会の未来>

ユーザーをより深く理解することの大切さ

・ユーザー不在のテクノロジーが蔓延している(エンジニアのためのテクノロジー)・インターネットができてから、Facebookにたどり着くまでを考えてみれば良い。インターネットというテクノロジーそのものはユーザーが欲しがるものではなかった、Facebookはユーザーが欲しがるものとして生まれた。

・人々の生活を理解することが、テクノロジーを良くする
多様なバックグラウンドを持った人たちとの協働の大切さ・そもそもは生活者をより理解するためにデザイナーが心理学者やリサーチャーなどとコラボしたのが始まり・これが起業家や医者、食品の研究家など多様に広がっている・さらにグローバルマーケットに対応するためには、さまざまな文化を理解する必要も出てきている

・複雑な課題を解決するイノベーションを見つけるためには、チームでコラボレーションすることが必要・そこに携わる個人はエキスパートであり、初心者でなければならない。
初心者のような謙虚で素直な気持ち(好奇心)と、経験者としての知識や経験を融合させるマインドセットが必要。そして、チームワークには「他の人が成功するのを助けられるか?」というメンタリティが非常に重要である。デザイン思考とは何か?・まず、多くの人たちが「自分はセンスがない」「自分の仕事はクリエイティブではない」と決めつけてしまっているが、すべての人に創造性は備わっている。クリエイティブ・コンフィデンス(創造できるという自信)を持つことが重要であり、これがデザイン思考の根底にある考え方。

・イノベーションはビジネスのあらゆる側面において必要である。急速に変化していく環境に適応するためには変革しつづける必要がある。

・デザイン思考は有益で創造性に富んだ課題解決方法である
人間中心のデザイン人が何を必要としているのか?を考える テクノロジーから考えるのではなく、どんな課題を解決するのか?をHow Might We… (どうしたら、望まれる状態をもたらすことができるだろう?どうしたら、その課題を解決できるだろう? )で考えることからスタートする。

どんなに巨額を研究開発に投資して、新しいテクノロジーを生み出しても、人々が本当に求めていることを捉えられなければ、大きな機会を逃してしまう。大切なのは正しい問い(How Might We…)を考えること。

その上で、
Feasibility:できるか?(技術的要因)
Desirability: もとめられているか?(有用性があるか?)
Viablilty : ビジネスの可能性があるか?
を意識すること。

プロセス:Inspiration / Ideation / Execution Inspiration:

好奇心がインスピレーションを呼び覚ます

なぜ、こうなってるのか? どうして、これが機能しているのか? なんで、こうなの?日常生活の中から、このように子供のようなシンプルな質問を考えていくことから、
課題抽出力は鍛えられる。(デザインにおける「観察」のプロセスですね)

正しい問いを尋ねることが大切。
クライアントからは、「2%,3%売り上げを上げたい」と言われるけれど、これは正しい問いではない。

正しい問いとは?
・大きすぎず、小さすぎない目標が必要
・戦略の目的は競合優位性の確立なので、意味ある差を作るものでなければならない
・持続可能なイノベーションを生み出すものでなければいけない
・いい塩梅の問いを立てる技術が必要で、これには練習が必要(シンプルな問いを考えていく)
・正しい問いをチームに聞いていくことでチームを正しい方向へ導く

Ideation:
アイデアはどこから来るのか?
・同じコンテクストにいては面白いアイデアは生まれない
アイデアはコンテクストの外からやって来る、これまでに仕事したことない人や、違う国でやるとか、コンテクストを変えるということが非常に重要。異業種コラボがイノベーションの秘訣。

アイデアを大切にしすぎないこと
・Good Ideaのためには、たくさんのアイデアが必要
だから、捨てることも大切である。

デザイン思考は反復的で、循環的。直線的にPDCAが回るのではなく非線形のプロセスである。常に様々な領域を探求し、潜在的なアイデアを掘り起こしていく。

顧客体験を考え抜くことから、アイデアは生まれる。

Execution:

事例紹介だけだったかと・・

事例:Innova Schools
https://vimeo.com/232564076

Pill Pack
https://vimeo.com/85782063

Ford
https://www.ideo.com/…/beyond-cars-designing-smarter-mobili…

組織について
*「いくらデザイン思考をインストールしても組織がダメだと機能しない」がIDEOの前提です

・例えば歴史のある自動車会社は、新しいモデルの車をルーティン的に次々と生み出していくことを効率化できる組織を作ってきたが、イノベーションを起こすには不向きな組織になっていた。

・ゆえに硬直した大企業に対して、スタートアップが新しいアイデアやイノベーションで勝つことができる時代になった。

・分析思考のマスターがいるように、デザイン思考のマスターも必要だ

・もっとデザイン思考ができる人たちが必要だし、組織の人たちを教育していく必要がある

スピードが求められる時代から、スピード&ケアの時代へ・

・スピードばかり重視して、未来へのネガティブな影響を考慮していないものが多い・今のことだけではなくて、未来を考えること・Circular Economyのように、限りのある資源をいかに効率的に使うのか?Do more with Lessの発想が必要。

<門井の所感>
"Beyond Design Thinking"で各務太郎さんは
「デザイン思考は0→1のイノベーションでなく、改善のためのツールだ」(人間中心といって観察から抽出される課題は模倣可能)といってましたが、ティムブラウンの話の中で何度も出てきた「正しい問い(How Might We...)」の設定に独自性があること、アイデア開発の段階で異業種コラボなど(これは各務氏も同じことを言ってた)でこれまでにない解決方法を見出せれば良いのではないかと。

いわゆる「アート思考」の良いところは「本当に自分がやりたいこと」をやるから、失敗しても自分で納得もできるし、責任も取れるっていう自らが創業者となる人の考え方のような気がしていて、クライアントから課題を出されるコンサルティングファームであるIDEOとは性質が違うのだろうと思いました。

なので、「デザイン思考の先に、アート思考がある」のではなくて、使い分けなのかもしれないなーというのが、今日の感想でした。

以上!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?