05.EMを活用した 環境アートとしての建築
EMをみなさんご存知ですか。
EMとは、英語のEffective Micro-organismsの略語で、Effectiveは「有用」、Micro-organismsは「微生物群」との意味を持ち、自然界から光合成細菌、酵母菌、乳酸菌など有用な微生物をたくさん集め、共存状態にした液状や粉末の事をそう呼びます。
EMは、もともと農薬や化学肥料の代替技術として開発されましたが、EMの強い悪臭抑制機能が明らかになるにつれ、畜産分野、生ごみのリサイクルへと応用されるようになり、更にEMの使用後の水質や土壌が著しくクリーンになることから、生活雑排水や下水、汚染された河川や湖沼の浄化にも幅広く使用されるようになってきました。土壌中の残留農薬やダイオキシンの分解にも顕著な効果があることも明らかになってきています。
いくら「健康問題は、自己責任である。」といっても大気、土壌、水、更に食品までもが汚染されている現状では、心や意識の持ち方や、運動による健康維持にも自ずと限界が生じてしまいます。EM技術は、このような八方塞の状況から生まれました。
人類の未来を考えると、食料、環境、医療、健康、資源エネルギー、教育、社会システムの問題を根本から解決する必要があります。EM技術は、これら人類共通の課題に対して、明確な答えを出せる大きな力、糸口を持っていると思います。その例をいくつか挙げてみたいと思います。
まず、既に一般化しているEMボカシによる生ゴミ処理は、ゴミ減量化の最大の難問を解決し、花や野菜を楽しく育て、生ゴミから出るシュン出液を台所の流しやトイレから流す事で、悪臭はもとより配水管のつまりをきれいにし、下水や河川の水もきれいにします。
健康や医療分野でもEM技術の応用が急速に進められ、EMXによって、ガンはもとより多くの難病の劇的な治療事例が多数出されています。医学博士でもある田中茂著「蘇る生命―自然治療力を高めるEMXとは」や小澤博樹著「食用生―自然食とEMXによる新たな抗酸化療法」・「ガン体質革命―抗酸化療法EMXの奇跡」等、かなり具体的に報告されています。
又、環境浄化の為になくてはならない水質浄化についても、既に県内中部にある具志川図書館が10数年前から取り入れ、毎年、県内外だけでなく世界各国から多くの見学者が訪れています。 図書館のリサイクル水の水質は年々向上しBODが1ppmを切る事もあるといいます。2~3ppm以下であれば飲料水に適した数値とされますからその水質の良さは想像がつくと思います。
以上のようにEMは、世界中で認められ、現代社会が抱える課題に取り組み、それぞれの分野で応用され、定着しつつあります。 私自身も、EM関係の会社に勤められる、「S」さん「G」さんの設計の依頼がなければ、EMが農業の分野だけでなく多種多様に活用されていることを知りませんでした。
私の設計は、クライアント(お施主)をまず知ることからスタートしますから、この方達が、EM、ビジネスを通して何を目指し、何を追求しようとしているのか非常に興味を持ち、比嘉先生の文献や、講演会を何度か拝聴する事によりEMの可能性、将来性、なんらかの方法で建築にEMを混在させる事で害を除去し、抑制する事が出来るのではないかと考え現在に至っています。
これまで、日本では経済の論理が優先され、自然破壊をしながら道路や建築を創り開発してきました。しかしこれからは逆に自然を活かしながら建築を創っていかなければならないと思います。これからの建築は、芸術性、機能性、経済性だけの追求では駄目です。
地球という美しい惑星をもっと知り、もっと親しみ、建築と環境をリンクさせ最終的には、その相乗効果で、新しい創造性のある結果を創り出すことが大切だと思います。
私達は、地球環境の将来を考え自然を慈しむ思いを一人一人が持ち、これからの地球環境の為に何ができるかこの答えを探し続けていかなくてはなりません。
私は事務所の
コンセプトに『五つの追求』をテーマ
を掲げています。
・ローコストの追求
・空間の追求
・美の追求
・健康を考える建築、つまり健住の追求
・環境を考える建築、つまり環住の追求
1~3までは、どちらかというとハード面なところでこれに関しては、皆さん建築にかかわる者ほとんどが追求してきたと思われます。しかしこれからは、4、5、つまり健康と環境を考えなくてはならない時代になったと考えます。
今回紹介するクライアントの「S」さん「G」さんに出会え、改めて健康、環境を考える大切さ、又EMを活用する事のきっかけに出会えたことを嬉しく思います。それでは、「S」さん「G」さんの住宅完成までのEMの活用状況をここで紹介します。 前半の躯体に「S」さん、仕上面の後半に「G」さんを順に紹介ししていきます。
1)↑これが一般的に土工事と言われる基礎部分の工事で、根切りと呼ばれる掘削工事を終わり動力噴霧器を用いてEMZを散布している所です。土壌処理としては、防虫剤によるものが一般的ですがその代わり白蟻対策としてEMZを散布しました。他に波動値向上、いやしろ地へとの効果を考えています。
2)↑これは、コンクリートの打設前からの状況です。先程の土工事の時と同じように打設前の処理として、EMセラミックスの入った1トン缶を前日に24時間つけて置き、水処理した物で、打設前の水洗いを行いました。いよいよ、プラントにてEMZ、EMセラミックス粉体入りのコンクリートを打設しているところです。参考のまでに量としては、EMZ、EMセラミックス粉体に各々水に対してEMZを0.5%、砂に対してEMセラミックス粉体を0.5%程度混入しております。強度等に関しては、前もって生コン会社にて、試験を行いなんら影響がないと判断し、使用しました。当日の打設前のスランプや空気量、塩分のチェックにおいてもいずれも問題がみられませんでした。
鉄筋コンクリート構造物は、コンクリート中の水酸化カルシウムと空気中の炭酸ガス及び酸素とが複雑に影響しあいアルカリ性を失って中性化し、これによってコンクリート中の鉄筋の腐食を引き起こし、その寿命を縮めているという問題がありました。EMZ、EMセラミックスにより、抗酸化力を向上させ、鉄筋等の金属が酸化し難い状況を維持し構造物の寿命を延ばすと考えらています。 又、仕上面、密度の向上、仕上げ後の臭気軽減も良いと思われました。
3)↑ これは、左官工事でモルタルの現場練りの状況です。これも同じくEMZ、EMセラミックス粉体を混入しています。
4)↑仕上面に入っていきます。これは、塗装材料にEMZを混入している作業です。
床仕上げのワックス、内部造作材のCL、外壁面のリシン吹きつけ、APクリヤなど、全ての塗装にEMZ、EMセラミックス粉末を混入しました。効果として酸化防止、シンナー、キシレン等の悪臭除去が考えられます。
丁度、同じ仕上げの時期に近くに、EMをいっさい使わずに進められている別の現場がありました。そこと比較するとEMを使用しなかった現場では、目がチカチカしたり、シンナー等の臭いでいわゆるシックハウス症候群と言われる様な現象で建物内で10分の打ち合わせも出来なかったのですが、この2件の住宅に関しては、非常に臭いが少なく20~30分でも平気で打ち合わせが快適にできる様な状態でした。
5)↑これは、クロス工事のパテ材、糊にEMZ、粉末を混入しているところです。効果として、悪臭の除去効果が大であること。アトピー、喘息の原因になるカビ、ダニを防ぐと考えられています。
6)↑ これは、床下にEMセラミックスを敷き詰めた状態です。
床下は、湿気が発生しやすい所ですが、「G」邸ではこのように湿気とりの役目を負わせるようセラミックスを敷き詰めました。又、床下換気扇も同時に設置しております。
7)↑ これは、S邸の外観ですがこの横のガレージの下部に合併浄化槽を設置しております。G邸も同様です。
仕組みは、先程も紹介しました具志川市図書館の浄化方法と同様で合併浄化槽の中にEMを混入し、リサイクルしております。
稼働してしばらくは、臭いがありますが現在は殆ど臭いがなく、散水、トイレ等に利用しております。S邸の場合には、槽からオーバーブローした水を上部の池へとつなげ落水口から池へと放流させ循環システムを構築しています。
8)完成した内部を紹介します。↑これは、S邸の青の回廊と呼ばれる玄関までアプローチです。門をくぐると壁の青い琉球硝子が外光を優しく取り入れ辺り一面を青い光が包込み、海中のトンネルを思わせます。この青い回廊の先の扉を開けると、打ってかわって眩しい程の光が差し込む光りのホールへと繋がります。ここは水中から水面へと誘われるところをイメージしています。
琉球硝子の止めに使用してるコーキングにしても、石張りの下地にもEMを混入しました。
コンクリートの仕上げにおいても砂利などの骨材がでるジャンカという現象が起こりやすいのですがそうした箇所も少なくとても綺麗な仕上がりです。
一見ハードで無機質なコンクリートの表情を緑、或いは木製ルーバーなどを多用する事により建物自体の表情を和らげる事が出来たと思います。
終わりに私がこの2件の住宅で体験した事は、EMを使う事により新築時に起こる臭いを余り感じずにすみ、快適な住まいが実現出来た事と土壌処理、白アリ駆除を全くしてないにもかかわらず5年が経過しても問題は起きて無い事が挙げられます。生コンの中性化現象など、すぐには結果が出ないものがいくつかありますがこれらは長期的に経過を観察して行きたいと思います。
これからの建築(住宅)は環境の問題や、健康、体に優しいといった事、「環境アート」がテーマでなければならないと思います。
心と体を癒し、人が快適に過ごせる事、住まいが心と体を癒す器である事が大切です。私たちをとりまく環境も二酸化炭素の増加に伴う地球の温暖化、そしてフロンガスによるオゾンホール等、問題は山積しています。
だからこそ、無理なく自然と共生する事への取り組みが地球に対する還元へと繋がり、ひいては次世代へとつながる未来を築く為の基になるのだと考えています。
2003.4.1 主宰 門口安則
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?