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2019年最大の事件!今月26日発売のフランス発超ベストセラーコミック『未来のアラブ人』の魅力


1.恐るべきその影響

事件です! 

 今月末、リアド・サトゥフ作『未来のアラブ人』を刊行します(鵜野孝紀訳)!!! 

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 内容の説明の前に、刊行が決まったことで私(編集)の身に起こった変化をお知らせします。

1.フランス語圏の漫画家(複数名)から、直に持ち込みが来るようになった。
2.フランスの漫画祭、スペインのコミックフェスティバルにご招待いただいた。
3.海外のエージェントから「ロンドンブックフェアで会おうね」と連絡がくる。
4.フランスの大出版社、グレナの社長さんに認識してもらえた。

 しがない編集者の身に、有り余る機会の連続。それもこれも「あの『未来のアラブ人』を刊行するから」なのです。

2.本書の紹介


 さて、『未来のアラブ人』って何……?と思われている方に、その魅力を少しだけご紹介いたします!

『未来のアラブ人』(原題:L’Arabe du futur)は、2015年の刊行以来、なんと全世界23カ国で刊行され、現在まで200万部を売り上げている超ベストセラーです!!!!

 作家のサトゥフさんは、現在ヨーロッパで人気ナンバーワン!の売れっ子漫画家です。

 パリに旅行すると必ず目にするポンピドゥーセンター(美術館)。

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 マティス、ピカソ、シャガール……等々が展示されているこの建物で、2018年11月から今年3月にかけて、サトゥフの特別展が開催されていました。

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 日本の漫画家で言うと、手塚治虫クラスかな?と思います。根拠はありません。

 そんな作家の人気を確固たるものにしたのが、本作『未来のアラブ人』です。これは1978年生まれのサトゥフによる自伝的コミックで、全6巻が予定されています(フランスでは4巻目まで刊行済み)。
 1巻目にあたる本書では、作者が生まれる前、シリア人の父とフランス人の母の出会いから、6歳までが描かれます。 

 そして、これが本文に出てくるサトゥフ君(2歳)!

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(p.7より)

参考に、これが現在のサトゥフさんです。

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© Renaud Monfourny_Allary Editions 

 さらに、「ホントに金髪で可愛かったの?」という読者の疑問にこたえて出された証拠写真がこちら

 確かに可愛いですね!

 こんな可愛いサトゥフ君が、
1.カダフィー大佐の独裁下のリビア
2.アルジェリア戦争や学生運動が終わった後のフランス
3.ハーフィズ・アル=アサド(現大統領の父)政権下のシリア
でたくましく育っていく姿が、コミカルに、ときにセンチメンタルに描かれています。

3.その魅力
 

 確かに可愛い! そして面白い!!! 
――でも、どうしてここまで世界中で人気となったのでしょうか?

 本書『未来のアラブ人』がヨーロッパのメディアで評される際、必ず比較されるのは
・ピューリッツァー賞を受賞した、アート・スピーゲルマン『マウス』

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そして
マルジャン・サトラピ『ペルセポリス』

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の2冊です。版権契約でお世話になった2Seas Agencyのホームページでも「In the same vein as Maus by Art Spiegelman and Marjane Satrapi’s Persepolis, The Arab of the Future is an autobiographical and political graphic novel.」という風に紹介されています。

  ここから少しまた私の話に移ります。私はグラフィックノベルがとても好きなのですが、その中でも一番衝撃を受けたのは、上に出てきた『マウス』と『ペルセポリス』です。
 『マウス』は、スピーゲルマンが、アウシュヴィッツから生還した自身の父親を主人公に描いたコミックです。私は小学校低学年のときに「図書館にマンガがある」と手に取って、ものすごい衝撃を受けました。当時はホロコースト自体の存在を知らなかったはずですが、電車に押し込まれ、踏みつけられ、裸にされ、水っぽいスープ(それでもあればいい方)を飲まされる描写には、とてもとても怖くなり、しばらく恐ろしさに震えていました。それから十数年、留学中にドイツ語版を購入し、本をリュックに入れて約18時間高速バスに揺られアウシュヴィッツに到着。スピーゲルマンの父のように生還できた人、スピーゲルマンの母のように生還しても自ら命を絶ってしまった人、そして証言すら残せずに死んでしまった多くの人に思いを馳せました。
 もう一つの『ペルセポリス』は、イラン生まれの少女が革命に翻弄されながらも、自分の生き方を見つけていくまでの姿が描かれています。こちらも自伝です。

 両方の作品に共通するのは、当時の時代背景に翻弄されながらも、家族の歴史、個人の一生が描かれていることだと思います。


 『未来のアラブ人』も、独裁政権下のシリアとリビアで、幼いながらも目撃することになる、信じられないような現実が連続しながらも、そこで描かれているのは家族の物語です。これはいつか別の機会にご紹介したいのですが、本書の版権交渉は半年以上にも及び、「もう下りる!」と交渉が途絶えた時期もありました。それは、作家サトゥフさんが、この、自らの家族の歴史を描いた本に多大な思い入れがあるからと、仕様について厳密な指示があり、日本の制作・流通過程に合致した形でどう折り合いをつけるかの交渉が長引いたためです。

 発売後、ぜひとも読まれた方に感想をお聞きしたいのですが、『未来のアラブ人』は、貧しいシリアの村落で育ちながらも、パリのソルボンヌ大学で学位を取得し、アラブ世界をよくするために独裁者になることを夢見つつ、アラブ世界へ強い愛を抱き、しかし同時にアラブ世界でもフランスでも居心地の悪さを常に抱えてしまっている、文化のはざまで苦悩する父親の物語であると個人的には感じています。

 『未来のアラブ人』第2巻では、少し大きくなったサトゥフ(小学生)が、アラブ世界の矛盾を具体的な形で目にすることになります。私は3巻まで読みましたが、2巻がいちばん好きです。ぜひ日本でも刊行したい……!のですが、率直に申し上げて、2巻以降が出せるかは、1巻の売上次第です!
 もしお読みになって続きが気になる方は、ぜひともご友人・ご知人におすすめいただければと思います。

4.ビッグニュース!

 さて、発売前にもかかわらず、2巻の話までしてしまいましたが、ここでビッグニュースの発表です。
 そんな、ヨーロッパ人気ナンバーワン作家、サトゥフさん、

 日本にいらっしゃいます!!!!!


 全国各地のイベントなども予定されております。詳細はまた後日!

 フランスでの最新刊『未来のアラブ人』4巻では、ティーンエージャーになったサトゥフ青年が『めぞん一刻』の響子さんに恋をする……というシーンが出てくるぐらい、サトゥフさんは日本が大好き。


 そして何より最近知ってびっくりしたのは、『未来のアラブ人』の執筆において、参考になった日本のマンガがあるというのです……

 それが何かというと……

 吾妻ひでお先生の『失踪日記』です!!!!!!!

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 過酷な現実、辛かったり悲しかったりする思い出を、どうコミカルに描くかという点で、本書制作の大変な助けになったそう。確かに絵の可愛さとコミカルさ、似ています!
(吾妻先生にもお忙しい中、ゲラを読んでいただきどうもありがとうございました!)

 サトゥフさんも日本語版刊行に大変思い入れがあるそうで、
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でそれぞれ日本語版刊行をアナウンス。そのそれぞれにものすごい数の「いいね!」(フランス語だと「J'aime」)が付いています。

 漫画大国日本に、日本漫画の影響を受けた超ベストセラーコミックがいよいよ上陸!!!  2019年最大の事件を、ぜひ目撃してください!!!!!!!!!


『未来のアラブ人』(1巻、と言えるようになりたい)は7月26日発売予定。全国書店さんやネット書店でご予約受け付け中です!

 さらに7月27日(日)には、田原町のおしゃれな書店、Readin’Writin’さんで緊急イベント開催予定! 詳細は以下のリンクからお確かめください。

 刊行までの間に、『未来のアラブ人』の魅力をどんどんお伝えしていこうと思っています!(その2)もお楽しみに!

(編集部)山口



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