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価値観って、ニーズ、性格、アイデンティティとどう違うの?【看護師の職場選びに役立つ情報】

みなさん、こんにちは!

前回の記事では、私たちのチーム名にも入っている「価値観」についての解説をしました。まだ前回の記事を読んでいない方は、こちらから読んでいただくとよりわかりやすくなると思います。↓↓↓

前回の記事で「価値観」について理解が深まったと思いますが、近いものに「ニーズ」、「性格」、「アイデンティティ」という言葉があります。

これらはどれも個人の中心になるもので、難しい言葉で言うと「自己概念を構成するもの」です。


価値観、ニーズ、性格、アイデンティティを知ることのメリット

看護師の皆さんがこれらの言葉の違いを知ることは、毎日の看護、看護師として働くこと、転職先を考えるときなどにメリットがあると私たちは考えています。

特に、自分や周りの人を理解することにとても役立ちます。
少し具体的な例を挙げてみますね。

◎看護実践へのメリット

医療ケアが必要な状態の患者さんは本能的な「ニーズ」が満たされていないことが多いです。マズローの法則で言う「生理的欲求」や「安全の欲求」が満たされていない状態ですね。

ケアを行い、徐々に本能的なニーズが満たされていくと、患者さんは自分の価値観に合う療養生活を送りたいと考えるようになります。

その段階ではその人の「価値観」に合わせたケアが必要になってきます。

◎看護師として働くことへのメリット

看護師は多職種との連携をするタイミングが多い仕事です。

他の職種の方々と働くときに、それぞれの職種で「アイデンティティ」の違いを感じることがあるかもしれません。

あなたも、看護師としてのアイデンティティや、自分が働く組織の人間であるというアイデンティティを持っているのではないでしょうか?

アイデンティティを理解し、相手の立場になって考えることができるようになると、コミュニケーションが円滑になると思います。

◎転職先や就職先を考える時のメリット

職場選びには自分がどんな「価値観」を重視しているか、あなたはどんな「性格」かということを理解することが重要です。

看護師は色々な職場の選択肢がありますが、どうしても人によって合う職場、合わない職場はあります。

ご自身の価値観や性格を振り返ってみることで、あなたに合った職場が見つかるかもしれません。

価値観とニーズ、性格、アイデンティティの違い

前振りが長くなってしまいましたが、ニーズ、性格、アイデンティティと「価値観」との違いについてお話ししたいと思います。

(1)価値観とニーズの違い

前回の記事でも出てきましたが、価値観についての本を出版されているRokeach先生(1973 p19,20)は、ニーズと価値観の違いについて、次のように述べています。

価値観はニーズの認知的な表現であり変換である。
人間はそのようなニーズの表現や変換ができる唯一の動物である。
さらに、価値観は単なる個人のニーズの認知的な変換ではなく、社会学的・心理学的な力が個人に働いた統合的な変換である。

Rokeach, M. (1973). The nature of human values. Free Press.

ニーズとは生物が持つ生来の欲求を示しています。
価値観は個人のニーズが社会的な要求を含んだ形で認知的に変換されたものと言えます。

例えば「のどが渇いた→水を飲む」の場面について考えてみます。
まず、「のどが渇いた」というニーズが出現します。その後、どの水を飲むかという選択に進むときに価値観が働いていきます。

経済、美容、環境・・・などの価値観が、その人の中で相対的な重要度の順に並べられて働き、水を飲む行動に反映されます。

経済性を重視する人は水道水を飲むかもしれません。美容を重視する人はお金がかかってもミネラルウォーターを飲むかもしれません。

患者さんにお水を選ぶお手伝いは不要かもしれません。
しかし、手術後の痛みが無くなる、など患者さんの本能的ニーズが満たされてきたら、早く仕事に復帰できるためのケアや、趣味を楽しむためのケアなど、次は患者さんが重視している価値観に合わせたケアを提供してみると良いかもしれませんね。

(2)価値観と性格の違い

性格(Personality)は、いくつかの定義があります。

性格は、環境との相互作用において特徴的なパターンを引き起こす持続的な性質である

Goldberg, L. R. (1993). The Structure of Phenotypic Personality Traits. American Psychologist, 48(1), 26–34.

性格は、比較的安定した行動、思考、および感情のパターンである

McCrae, R. R., & Costa, P. T., Jr. (2003). Personality in adulthood: A Five-Factor Theory perspective. New York, NY: Guilford Press


また、性格についてはかなり研究が進んでいまして、以下の5つの要素で構成されることが分かっています。

(1)外向性(Extraversion)
(2)協調性(Agreeableness)
(3)勤勉性(Conscientiousness:良心性)
(4)情緒安定性(Neuroticism:神経症傾向)
(5)知性(Openness/Intelligence:開放性/知性)

村上宣寛,村上千恵子.(2001)主要5因子性格検査ハンドブック―性格測定の基礎方主要5因子の世界へ―.学芸図書.東京.

また、次のような指摘がされています。

性格と価値観の最も基本的な違いは、性格は結果を表すものであるのに対し、価値観は動機付けとなるものであることだ

Parks-Leduc, L., Feldman, G., & Bardi, A. (2015). Personality traits and personal values: A meta-analysis. Personality and Social Psychology Review, 19(1), 3–29. 


つまり、性格は個人がどのように感じ、考え、振る舞う傾向があるかを表したものであり、個人の反応と行動の要約と言えます。

しかし、価値観は人の動機であり、行動に反映される場合と反映されない場合があります。

例えば、あなたが職場を選びをする場面を考えてみてください。

職場探しをする時に、とりあえず見学に行って話を聞いてみよう!(外向性)という風に探すのか、まずは求人情報をメモにまとめて(勤勉性)という風に探すのか、性格が表れると思います。

また、良さそうな職場があったときに、直感的に決めるのか、データを基に決めるのかなども性格の現れだと思います。あなたの価値観に合った職場をしっかり選べるように、自分の性格を知ることも大事です。

(3)価値観とアイデンティティの違い

アイデンティティは、自己同一性とも表現されることがあります。
こちらも辞書や論文でどのように表現されているか見てみましょう。

まずは広辞苑の定義です。

人格における存在証明または同一性。ある人が一個の人格として時間的・空間的に一貫して存在している認識をもち、それが他者や共同体からも認められていること。また、ある人や組織がもっている、他者から区別される独自の性質や特徴。

広辞苑

続いて論文での定義です。

アイデンティティは、社会の中で構成された集団の構成員であること(例:英国に住んでいる・英国人であるなど)、個人の特性(例:賢いことなど)、および身体的側面(例:身長が高いなど)から構成される

Jaspal, R., & Breakwell, G. (Eds.). (2014). Identity Process Theory: Identity, Social Action and Social Change. Cambridge: Cambridge University Press.


さらにアイデンティティは、以下の7つの原理や目的を持つとされています。

(1)時間と状況における連続性があるもの(連続性)
(2)他者からの一意性または特徴を示すもの(特徴)
(3)人生における自信とコントロール感を得るためのもの(自己効力感)
(4)個人的な価値または社会的な価値の感覚を得るためのもの(自尊心)
(5)他者との親近感および受容感を維持するためのもの(帰属)
(6)人生における有意性や意義を見出すためのもの(意義)
(7)個人のアイデンティティ間の両立性の感覚を確立するもの(心理的一 
    貫性)

Jaspal, R., & Breakwell, G. (Eds.). (2014). Identity Process Theory: Identity, Social Action and Social Change. Cambridge: Cambridge University Press.


価値観とアイデンティティの関係についてはBardiらの論文で述べられています。

価値観はアイデンティティの構成を決定づける要因であり、アイデンティティを構築する際の調整役であった

Bardi, A., Jaspal, R., Polek, E., & Schwartz, S. (2014). Values and Identity Process Theory: Theoretical integration and empirical interactions. In R. Jaspal & G. Breakwell (Eds.), Identity Process Theory: Identity, Social Action and Social Change (pp. 175-200). Cambridge: Cambridge University Press.

これだけでは何を言っているのかわからないかもしれません。
価値観とアイデンティティの関係をもう少し具体的に表現してみます。

価値観は個人の中で優先順位があるので、個人がアイデンティティを構築する際に、集団のメンバーであることや、個人の特性、身体的側面をどのような順位で(価値観として)重視しているかによって、形成されるアイデンティティが異なることを示しています。

さらに、7つのアイデンティティの原理や目的の重要性も、その価値観の優先順位に依存していると言えます。

医療チームは様々な職種で構成されています。それぞれの職種だけでなく、年代、性別、出身地、国籍などたくさんの要素によって、それぞれ個人のアイデンティティが構成されています。価値観もそうですが、お互いに尊重しあって協力できるといいですね。

私は、このような個人を構成する自己概念について探求することが大好きなので、論文などを読んでいるとワクワクするのですが、概念についての用語は抽象的なので、なかなか難しい内容ですよね。

次回は、ちょっとブレイクタイムです!
カチケンのロゴに込めた思いについてお話ししたいと思います。

今後も時々「価値観」について深堀していきたいと思います!
・価値観って変化するの?
・価値観は男女で違うの? 
・価値観って遺伝するの?
などまだまだネタはありますよ!

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