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村上春樹・安西水丸『ランゲルハンス島の午後』

このふたり。読まずに、いや開かずにいられようか。


一九八四年六月、「CLASSY」創刊から二年間、「村上朝日堂画報」というタイトルで連載されたものの単行本化。
ぼくとしては、おとなの絵本(健全な方のね)と呼びたい。

ぼくが出会った頃の“村上春樹性”が、春風にのって香ってきた。
水丸さんのスクリーントーンは、何の変哲もないモノたちをたちまち秘密の宝物に変身させてしまう。

ほぼ、一時間で読了。
春樹ファンの家人は、ほぼ四十五分で読了。

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読みながら笑う家人。
ぼくと同じところで笑ってた。
「地下鉄銀座線における大猿の呪い」

最後は「ランゲルハンス島の午後」
中学生になったばかりの春樹少年は、教科書を忘れてしまい取りに帰らされたことがあった。でも、でもである。

―まるで春の渦の中心に吞み込まれたような四月の昼下がりに、もう一度走って生物の教室に戻ることなんてできやしない。1961年の春の温かい闇の中で、僕はそっと手をのばしてランゲルハンス島の岸辺に触れた。

二〇二一年四月、ぼくはもう一度村上春樹に出会った。



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