異語り 041 本屋の板前
コトガタリ 041 ホンヤノイタマエ
昨日はうっかり本を読み始め、更新をすっ飛ばしてしまいました。
親になってからはだいぶ少なくなってきましたが、本を読み始めると気づくと日付が変わっていたということがちょくちょくあります。
でも、久々に集中して読んだ気がしました。あー楽しかった。
子供らが大きく成長したおかげでしょうか、(邪魔しに来なくなったため)
感謝しつつも、自重しなければと反省中です。(今朝のお弁当はだいぶ適当に……)
せっかくなので、本にまつわる「異」の存在を記しておこうと思います。
本好きの「異」なのか、本そのものの「異」なのかはわかりません。
とても静かな、でも確かにそこにいる存在です。
気が付いたのは高校生ぐらいの頃。
1人で本屋や古本屋を回るようになってからでした。
棚を眺めて物色していると視界の隅に白い人が立つのです。
初めは他のお客さんかと思っていましたが、ある時その人はどうやら自分を見ているらしいと気付き、思い切って顔を向けました。
いたはずの場所には誰もいません。
あれ? やっぱり気のせいかな
なんとなく気にはなったので本屋内をうろつき、それっぽい白い格好の人を探してみましたが、その時は見つけることはできませんでした。
別の日。違う本屋で棚を眺めていると、また白い人が立っています。
前回のことがあったので少し慎重にその人のことを探りました。
でもチラリとでも直視しようとするとその人はいなくなってしまいます。
自分の気のせいか、変な人に目をつけられているのか。
どちらにせよ正体がわかるまでは気持ちが悪い。
次はもっと慎重に!
そう心に誓い次の機会を待ちました。
何度かの空振りの後、白い人が現れました。
直視にならないギリギリの範囲を探りつつ、その人を観察します。
目の端に神経を集中するのはとても難しく眉間のあたりがもにょもにょとしてきますが、このままでは気になって仕方がない。
最終兵器(手鏡)も用意していましたが、通用するかわからないのでその前にできる限り情報収集しようと思ったのです。
立っているのは男性。
服装は板前さんが着るような白衣に白い帽子もかぶっています。
?! なんで板前さんがこんなところに?
驚きのあまりうっかり顔を向けてしまい、板前は消えてしまいました。
でもあんな格好なら見失うこともないはず。
そう思い直し、板前が立っていた棚の角へと向かいます。
曲がった先にその姿はありません。
本棚が3列並ぶ通路を奥までずんずんと進み、左右を見渡しました。
板前は見当たりません。
また逃げられた
何をされたわけでもないですが、なんとなく腹が立ってきました。
ただ少し、違和感も感じました。
あれは本当に板前さん?
その後も何度か遭遇しましたが、やはり直視することは叶わないまま。
最終兵器ももちろん通じませんでした。
さすがにここまでくると腹立たしさよりも気味の悪さの方が強くなってきます。
そこで作戦を変更しました。
どういう条件が揃うとあの板前が現れるのか?
建築物やインテリア系の棚を見ている時。
その棚の前で5分以上経つと現れる。
現れるのは店の奥側の棚の陰。
壁際の棚など、物理的空間がなくても現れる。
本屋さんと図書館には来るが、古本屋には来ない。
数十回のトライ&エラーの末、一定の法則を発見しました。
もはや人ではないだろうと確信はしていましたが、不思議と恐怖心はなかったです。ただひたすらに気味が悪い……。
でも、板前は何かしてくることはなく、腕を組みじっとこちらを見つめているだけ。
なぜ建築物とインテリア系の本棚なのか
なぜ板前の格好をしているのかは今でも分からないままです。
友人達は見たことがないそうなので、私自身にまつわる人なのかもしれません。
でもご先祖にも親戚にも板前や建築系についた人はいません。
そして、全国どこにでも条件がそろえば現れます。
子供も産みましたが、見るのは私だけ。(代替わりはしないみたいです)
ええ、いまでも来ますよ。本屋さんに行けば会えます。
気にはなりますが、もう数十年にもなればいいかげん慣れます。
何かしてほしいのか? 進むべき道へ導こうとしているのか? 向こうからのアクションは皆無なのでわからないままです。
謎解き系の挑戦でしょうか?
とりあえずは気長に、いつまで付いてくるのか経過観察を続けるつもりです。
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