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異語り 054 鮮度

コトガタリ 054 センド

怪談を書くとき気をつけているのは鮮度。
あまりにも生々しいというか、まだ息づかいが感じられるような、怪異の気配がするものは手をつけずに寝かせることにしている。

鮮度は体験した日から近ければいい。と言うモノでもない。
聞いた時にすでに気配を感じられないものや、10年以上寝かせても未だに悪寒を感じるものもある。
なんとなく感じるのは、人霊系は長く、妖系は気配はあっても無関心? 干渉してくる気配がないモノが多い気がする。

『寝かせるようにしている』と書いたが、実際は『書けなくなる』が正しい。
書こうとしたり、書いている途中、もしくはあらすじを考えている段階で、なんとも言えない寒気のような気色悪さを感じて筆が止まってしまうのだ。

自分としては怪異の種を蒔きたいのであって、今パワーがあるモノやまだ意識がある怪異に力を与えるようなことはできればしたくない。

そういう思いもあって、何かしらの気配や感触を感じたものは文字に起こすのをやめる。

他の方がどういう手順で書いていらっしゃるのか興味があるので自分の怪談の書き方もちょっと説明してみようと思う。(聞き取りは終了して文字に起こす段階です)

まず頭の中であらすじ(その話の流れ)を組み立てる。
次にほぼ完成形に近いに近い下書きを作る。(ここまではアナログ〈手書き〉です)
それをデジタルに起こすためにメモアプリや、Evernoteなどの媒体に音声入力で吹き込む(以前は腱鞘炎を繰り返していたので打ち込みの負荷を軽減するため)
最後にそれらをパソコンで手直しして体裁を整えnoteにアップ。

活きのいい怪談は、大体最初のあらすじを考える時や下書きを書き始める段階で筆が止まるの。


さて、ここからは更新が遅れた言い訳も兼ねまして……昨夜の格闘をレポートします。

あらすじはもちろん頭にに入っている。流れもちゃんと組み直した。
そして下書きも出来上がっていた。
しかしここから停滞が始まった。

まず、メモアプリが起動しない。
Evernote・メモ帳・Googlekeep どれもぐるぐるするばかりで一向に開かない。
時折通信状態が不安定になることはあったが、こんなに(約一時間)つながらないことはなかった。
いや、他のアプリや検索は可能だったから通信環境の問題ではなかったのだと思う。
アプリのアンインストールと再インストールも試みたがやはりぐるぐるするばかり。
試行錯誤して小一時間、Evernoteが動いた?
と思ったら今度はログインできない。

あれこれ試しているうちに息子が帰ってきてしまった。
しかも今日に限って遊びに行かないらしい。

息子は怖がりのため音声入力をしていると逃げ出すか「やめてー」と騒ぎ出す。

なので音声での入力を諦め、手で入力に切り替える。

しかし、今度は言葉が出てこない。
ほぼ読み上げるだけの所まで書いてある下書きがあるのに。
それをそのまま打ち込むだけで完了するのに。
それができない。

一文ずつ、一文字ずつだましだまし打ち込んでいったが、いよいよ怪異そのものを書く部分に差しかかると完全に脳みそが機能停止状態に陥った。

日常生活(主婦業)はできる。でも頭の中で書くべき文章を拾おうとすると逃げていく。

悶々と格闘してみましたが、膠着状態のまま日付が変わったので諦めました。

書きかけの話の内容は20年ほど前に友人から聞いたモノ。
ただ内容がひょっとしたら生霊系かもしれないなぁと感じていた話。

もう一度下書きを読み直す。
自分の書いた乱れた文字を目で追っていると、突然 腕を鳥肌が駆け上がってきた。


ああ、まだ活きがよすぎるらしい。


話を聞いた時から、ゾワリと背後に気配を感じるような不気味さ、気色悪さを感じていた。
まさか20年経った今でもまだその気配を感じるとは。

下書きまでは何の気配もしなかったのに、何かの蓋を開けてしまったのだろうか?
ここまで形になった段階でのストップは初めてなので対処に悩む。
この下書きも処分した方がいい?

『愛着』というか、『せっかく書いたからもったいない』という気持ちがわいてしまう。

さて、とりあえずは保管してみよう。
いつかこの気配が薄れて書けるようになることを願って。


あっ、何かあるようならちゃんと処分しますからご心配なく(レポート付きで!)

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