見出し画像

異語り 059 家庭菜園

コトガタリ 059 カテイサイエン

我が家には大きな庭があります。(家が小さいとも言う)
引っ越してきた当時は大々的に庭を耕し、大きな家庭菜園も作っていました。
元々が牧場だった土地らしく、土が豊かなおかげで何を植えても(世話が下手でも)十分な実りを得ることができました。
二三年かけて好みと消費量を把握し、ミニトマト・きゅうり・じゃがいもの3種を定番と決め、プラスαでちょこちょこと冒険をするスタイルに落ち着きました。


5年目だったと思います。
その年のプラスαはオクラとスイカとカブ。
初めてでしたが、オクラとカブは豊作でした。
ただスイカはさすがに家庭農園では無理があったらしく、中身が白い(うっすらと赤いマーブル模様が入っていた)残念な実が二つできただけでした。

でも、問題はスイカではなくカブでした。
『大きなかぶ』の絵本が好きだった娘にねだられ、出来る限り大きく育てることになったのです。
根菜類はあまり大きくなりすぎるとすが入ったり、実が割れてしまったりします。
さすがに全部とは言えず、育ちの良さげなものを数株残して様子を見守ることにしました。

それでも放置しすぎれば土の中で腐ると思われたので、雪虫が飛び始めた頃に家族揃って収穫しました。


その中の一株は本当に大きく育ち、赤ちゃんの頭ぐらいのサイズになっていました。
さらにはやっぱり実割れしており、
その割れ目が

まるで人の顔のように見えました。

捨てるのも食べるのもちょっと勇気がいるようなけっこうな極悪顔。

それでも「食べ物は粗末にできません」ということで割れた部分を大きく抉りとってから美味しく頂きました。


しばらくはそんな人面カブをネタにしながら楽しんでいました。

すっかり忘れた翌年。プラスαは人参とゴーヤ。
でもこの年はちょっと形のいびつな実が多かったです。

トマトやキュウリ、ゴーヤのように土の上に実るものは変わりなかったのですが、人参とジャガイモはなんとも歪な節ができたようなモノが大量に穫れました。

二股にんじんのような笑えるモノならよかったのですが、

ねじれたような 押し潰されたような なんとも奇妙な形の人参ばっかり。
そしてそれまでは毎年順調に収穫できていたじゃがいもまで、土を噛むほどに曲がったりねじれたりしていました。
連作障害にも気をつけていたから原因も思い当たらず、「来年は土を入れ替えてみようか」としか言えませんでした。


さらに翌年、土を入れ替えてはじめました。
なんとなく根菜は難しいのかも? と思ったのでプラスαには大葉とナスを選びました。

しかし異変は土の上の実にも出始めます。


さすがにミニトマトだけは丸い実をつけてくれましたが、その数は随分と少なくなりました。


きゅうり・なす・大葉は、そのほとんどがいびつに歪んだり 縮んだりしたものばかり。

そしてジャガイモには、人の顔のような筋がついたものがいくつも出てきました。

もちろんちゃんと食べましたよ。無駄にしたら余計に呪われそうですし……。


ただその翌年から家庭菜園はやめてしまいました。
下の子が幼稚園に通い始め、「小学校と幼稚園の行事に追われて忙しくなったから」と言い訳をしましたが、正直なところは……ちょっと怖くなってきたから。


もし続けていたら……、人面野菜だらけの魔女の畑になるかもしれないと本気で考えてしまったからです。


現在庭は荒れ放題のジャングルに(汗)
ただ、かつてカブを植えていた所だけ(30センチ四方くらい)土が見えています。


最近になって、トトさんが「また何か作ってみようかなぁ」と言い始めています。
とりあえずは、「ミニトマトとかがいいんじゃない」っていう話をしていますが、私は手を出さずに見守るだけにしたいと思います。

サポートいただけるととても励みになります。 いただいたエールはインプットのための書籍代や体験に使わせていただきます(。ᵕᴗᵕ。)