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オンライン古本屋始めました

「夏森書店」というオンライン古本屋を始めた。
というのも、いよいよ我慢の限界が来たからだ。

私はふだん書店員として働いており、いずれは独立したいと考えている。
だけど、現状では一向に独立できる気配がない。
働くにつれて出版業界の厳しさが身にしみるし、低い給料では独立できるような資金もたまらない。
独立するなら早いほうがいい。
若いうちなら失敗してもダメージが少ない。
でもそんな事情とは関係なく、生活するだけで精一杯な日々は淡々と過ぎ去っていく。

そんなふうに悶々としているときに、福岡の本屋「月と犬」さんが書いた文章と出会った。

入念な調査計画も、莫大な資金もあったわけではなく、店舗物件の家賃を払っていける戦略もないまま、とにかく始めたかった。お金が貯まるのを待っていられなかったので、できる範囲で始めたお店です。

『「里山通信」1号』

私には、実店舗を契約して本屋を始めるのはまだ難しい。
でもオンライン古本屋ならできるかもしれない。
ようやく独立の一歩を踏み出せる。かすかな希望が見えた。

しかし、ここからが大変だった。
オンラインショップで古本を扱うには古物商の資格が必要で、警察署で申し込みをしなければいけない。
慣れない警察署。右も左もわからない私。
管轄の窓口までなんとかたどり着き、提出する書類の説明を受ける。
意外と丁寧に説明してくれたのでホッとするが、5枚くらい書類の提出が必要でげんなりしてしまう。

それから2週間ほどは書類作成の日々。
区役所で住民票をもらい、申込用紙に記入し、本籍地から身分証明書を取り寄せる。
そうして書類が揃い、やっとのことで警察署に提出するも、不備があるとのことで再提出を命じられる。
家に帰ってパソコンで修正し、再び警察署に持っていくが、しばらく待たされた挙げ句また不備があるとのことで再提出するハメに。
そして、このあとも再提出が2回続くことになる。
夏の暑い日差しの中、うなだれながら警察署と家を往復し続けた。

そうして、やっとのことで書類が受理され、そこからさらに40日待ってようやく古物商許可証をもらうことができた。
正直、資格なんてあってもなくても変わらないと思っていたが、苦労して取った古物許可証を手にしてみると、自分の生き方を決めたような充実感があった。
「みんな持ってるから」という理由で取った運転免許証と違って、古物許可証は自分で考えて自分のために取ったものだ。
そう思うと、「古本屋としてやっていくぞ」という自分の意志が古物許可証として具現化したよう思えた。

2024年8月14日。私は「夏森書店」をネット上でオープンし、毎日1冊くらいのペースでコツコツと古本をアップしている。
書店員として本屋で働いたあと、家に帰ってから古本の写真をとってネットに上げる作業をしているので、もはやどこからが仕事でどこまでが生活なのかわからない。
そうして2週間がたった今、2冊の古本が売れた。
本を仕入れて、売って、発送する。
これらを伴う生活を、とりあえず半年は続けたいものである。

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