新刊書店で出会い料として本を買う

新刊書店は高い。
いつの間にかそんなイメージが頭にこびりついていた。

そんなだから、書店で本をいい本を見つけても、「中古が出てから買おう。それか図書館で買おう」と見送るようになった。
でもある日気づく。そう思った本はけっきょく読まない、ということに。

というのも、中古本を買うにしても図書館で借りるにしても、手間と時間がかかってしまう。
その手間と時間をかけてる間に「その本が読みたい」という気持ちが、「その本を読めたらいいなあ」になり、最終的に「まあ、今の俺には必要ないか」になってしまっていたのだ。

それに気づいてからは新刊書店でも本を買うようになった。
ただ、当初は自分を納得させるのに大変で、新品の本を買う度に「中古ならもっと安く買えるのに・・・」というささやきが頭の中でこだましていた。
そこで自分を納得させるために編み出した考え方が、「出会い料として本を買う」ということだ。

というのも、その本を見つけられたのは、その書店がその本を仕入れて、見つけられる場所にディスプレイしてくれたからである。
「出会い料として本を買う」というのは、その"仕事"にお金を払うということである。

これを意識し始めてから、書店での買い物が気持ちよくなった。
前はいい本を見つけても、その場で買えなかった。
合理的に考えているようで、やはり気持ち的にはモヤモヤしたものが残っていた。
だけど今はいい本を見つけたら、そのままレジに持って行けばいいのである。
そこでケチケチせずにお金を払う爽快感たるや。

そして、そうして買った本はやはり読む。
「読みたい」という気持ちのままに本を読むことができる。
ようするに、読みたいときが買いどきなのである。

また、書店への気持ちにも変化があった。
「本を買うことで書店を応援する」という気持ちが芽生えたのだ。
当たり前だが、書店は客が本を買ったお金で利益を得ている。
これまた当たり前だが、ネットで本を買うと書店には利益が入らない。
つまり、書店で本を買うことで、その書店にお金が入り、その書店が閉店せずに続いていく力になる。

この視点を得てからは、新刊書店での買い物に一切の抵抗がなくなった。新刊書店でいい本を見つける→躊躇なくレジにもっていく→「いい出会いをありがとう」と慈愛をこめて小銭を渡す→かっこいい買い方をした自分が好きになる→その感覚を味わうためにまた書店でいい本を探す→書店でいい本を見つける・・・

という新刊書店無限ループである。

本はどこで買っても同じである。
値段も一緒だし、内容ももちろん変わらない。
でも、だからこそ「どこで買うか」が消費者には問われているのかもしれない。

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