第96回 5条件の比較
ここ数回、「道」、「天」、「地」、「将」、「法」について説明しました。
今回は、「孫子」に書かれている具体的な利用方法について説明します。
「孫子」では、この5つの説明に続いて、次のことが書かれています。
「主は孰れか有道なる、将は孰れか有能なる、天地は孰れか得たる、法令は孰れか行なわる、兵衆は孰れか強き、士卒は孰れか練いたる、賞罰は孰れか明らかなると。」
主は孰れか有道なる ~どちらの君主が「道」の条件を満たしているか!?
将は孰れか有能なる ~どちらの将軍が「将」の条件を満たしているか!?
天地は孰れか得たる ~どちらの軍が「天地」の条件を満たしているか!?
法令は孰れか行なわる ~どちらの軍が「法」の条件を満たしているか!?
兵衆は孰れか強き ~どちらの国の兵力が強いか!?
士卒は孰れか練いたる ~どちらの国の兵員が強いか!?
賞罰は孰れか明らかなる~どちらの賞罰が厳正に行われているか!?
よく勝敗を左右すると言われている戦力や兵士の質よりも、まずは5つの条件を満たしているかどうかの方が重要という訳です。
同様に投資でも、5つの条件の下に、資金力や投資経験などが来るものと考えられます。
つまり、金持ちであれば儲かるというのは、正しい認識ではないということ。
経験があれば儲かるというのも、正しい認識ではないということです。
例えば、「隣の芝生が青く見える」ということは良くあります。
そういう光景で私が鮮明に覚えているのは、2005年の冬から2006年の年始にかけて、つまりライブドアショックの直前です。
株式市場としては、好循環の真っただ中にありました。
買ったら騰がる、騰がるから買うという動きの中で、多くの投資家が資産を倍増させていった頃です。
この頃の特徴としては、多くの銘柄がギャップアップして始まることが多かったことでしょうか!?
また、下げても直ぐに戻してくると言う動きも特徴的でした。
ですから、多くのデイトレーダーたちが、自分たちの投資法を改善し、引け前に売らず、そのままオーバーナイト、つまりスイングトレードに変更していました。
また、損切りしてもギャップアップして戻すので、切った分だけ損と考え、損切りしなくなりました。
こうして2005(平成17)年の年末は、多くの投資家が有頂天になって年越しをしました。
更に年が改まると、怖いくらいにどの銘柄にも、資金が流入します。
4753ライブドア中心に、多くの個人投資家が信用買いをしていたため、株価上昇で得た信用枠で再投資するということをやっていたのです。
そして、2006(平成18)年1月16日(月)、引け後に4753ライブドア社長の堀江氏が逮捕されてしまいます。
すると、翌17日(火)より、元々板が薄い個人好みの銘柄の多くが、売り気配で始まります。
特に、この相場の中心にあった4753ライブドアは、その後一週間売られ続けた訳です。
さて、この時、多くの個人投資家が株式市場から去っていきました。
その多くはデイトレードやスイングトレード主体の投資家で、利益を伸ばすためにそれまでの自分の手法を改めた人たちだったと思います。
デイトレードの最大の利点は、ギャップダウンを食らわないことです。
損切りの最大の利点は、損失を拡大させないことです。
この利点を、利益を拡大させるためという理由で捨ててしまっていたのですから、大きな損失を被ったに違いない訳です。
更に言えば、このライブドアショックを命からがら生き残った投資家も、それまでの相場が忘れられずに、「損切り」が遅くなった人たちが多々いました。
その後のリーマンショックでは、この「損切り」のタイミングが遅くなったことが致命傷となり、復活出来ずに消えて行った人が多くいました。
私が生き延びられたのは、「損切り」を徹底し続けていたからです。
確かに、「損切り」せずに持ち続けた方が、効率が良いと、私も感じていました。
しかしこの時、以前に手掛けたことがあった8245丸栄などのK氏銘柄を思い出していました。
- 仕手銘柄は、美味しい時が最も危ない!! -
そう教わっていたため、「損切り」を止めると言うことはしませんでした。
ですから、ライブドア相場の私の成績は、良かったのですが、周囲の投資家たちよりワンランクもツーランクも下でした。
このように、隣の芝生が青く見えて、投資法を改め方が良いように思えても、「risk」を軽視しないように「目的」をしっかりと見据えていたから、生き残れたのだと思います。
また、「環境」や「タイミング」も、永遠に続くものでは無く、いつかは終わりが来るものだと分かっていました。
その時に、巻き込まれないようにするには、「損切り」が重要だと理解していました。
手に余る銘柄に対して手を伸ばさず、自分の投資法を厳守することこそが、大暴落を切り抜けさせてくれた要因だと私は理解しています。
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